2011年のノーベル文学賞受賞者、スウェーデンの詩人(心理学者でもある)トーマス・トランストロンメル氏の唯一の邦訳詩集です。詩人の同賞受賞は16年ぶりとか。いちポエム好きとしては嬉しい出来事でした。
表題『悲しみのゴンドラ』は音楽家リストの作品名から来ているようです。トランストロンメル氏はピアノ演奏も得意としており「わたしの詩は、本来なら音楽で表現されるべきものの埋め合わせといえよう」とまで言っているそうなので、スウェーデン語の原詩の音律で作品を味わえないのが非常に惜しまれますが、邦訳でも世界観は伝わると思います。いずれアルファベットの発音だけ勉強するとかして原詩に挑むとしても何の基礎もなくいきなりでは厳しいので、やはり邦訳は参考になります。感謝です。
詩のイメージとしては、アフマートヴァとかクァジモド等の詩人たちのものと近いという印象を受けました。本作に収められている詩はすべて短編で、俳句も取り入れているというだけあり表現は簡潔です。本作の表紙は青と白ですが、トランストロンメル氏の詩ではまさに水や氷、空、海、雲、魚、そして宇宙といった、青と白のイメージをもつ言葉が多用されています。詩人の母国スウェーデンの景色がそこに表されてもいるのでしょうか。簡明な表現が作り出す不思議な透明感と緊張感は氷の山々と凍てつくような冷気、白く吐き出されて消えていく息を連想させます。
本書に収録された詩は22編。1ページあたりの文字数も少なく、すぐ一読できますので、少しでも興味のあられる方はぜひお手にとってみてください。
ノーベル賞受賞を機に、もっと同氏の詩集が日本で刊行され入手しやすくなることを祈りつつ。