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「欣求浄土」は擬死からはじまり、本当の死に辿り着くまでの、つまり死から生を吸いとってゆくような小説で、これはそれ以前に書かれた藤枝のやはり代表作である「空気頭」と対をなす作品といってよい。「空気頭」が生から死への垂直的意味合いから、ある種の変態的嗜好によってこの世界を飛躍しようとするのなら、「欣求浄土」では死から生を吸いとっていく、自然との融和によって、この世界を不条理の錯乱で逸脱しようとする。
実際に、この作品は、最初に、最後に飾られてある「一家団欒」が描かれた、ということであった。つまり死後の世界をモチーフにしたその短篇から、著者はまるで生を汲み尽くすように、この作品を紡いでいったのだ。
藤枝静男という作家は聞き慣れない人も多いかと思う。実際、極北の作家などともいわれている。けれども、彼こそが小説とは何かを本当の意味で知っていたのではないか。現代の作家では、笙野頼子や川上弘美らが彼の文学に熱いラヴコールを送っている。藤枝の小説に触れたなら、安易な私小説への偏見が一掃される。実際、僕は彼の著作に触れて、その後の人生が明らかに変わった。こんな作家が日本にいたのか、とそう思ったのだ。
誰だって、それまでの小説の見方が大きく変わるはずだ。
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