市川崑監督で製作された映画のイメージから、犯人の悲劇性が印象深いようですが、実際には、原作はずいぶん説明不足のところがあって(きちんと説明するとすぐに犯人がバレるからだと横溝さん自信が言い訳してます)、映画がそれをカバーしてますね。
本作の売りになってる見立て殺人にしても、獄門島や犬神家の一族に比べると必然性、つまり、何故犯人がそんなことをわざわざしたか、それをすることによって犯人に何らかの利益があったか、には無理があります。それどころか、犯人が無理に見立てにこだわったために致命的なエラーをしてしまい、かなり早い段階で金田一さんに見抜かれてしまってます。だから、この作品の肝は見立て殺人ではなく、20年前の殺人事件の真相の方にあると思います。それがわからなかったからこそ、金田一さんも犯人を見抜いていたにもかかわらず警察にそれを指摘できなかったので(ちょっと苦しいかな?)。
もう一つ、私が本作を評価しているのは、私が初めて読んだ横溝作品というからだけでなく、登場人物のキャラクターについてかなり細かい点まできちんと書いている点に好感が持てるからです。それこそ、絶対この人は犯人ではあり得ないというくらいの脇役まで、どういう人物かということをわざわざ筆をさいて説明してます(本多先生の息子の嫁さんとか)。その割には、磯川警部があの女性を愛していたというのを私は最後までわかりませんでしたけど。
というわけで、この作品はどこに評価点を見出すかで傑作か凡作かが決まります。人により、評価が分かれるとしたらそれが理由でしょうね。