「世界の中の『禁断の果実』を食べ歩く」というサブタイトルだが、小泉武夫がよく著するような、ただの「珍食紀行」では無い。もちろん、そうしたアプローチの過程も、しっかりレポートはされている。しかもそのスリルがユーモアとアイロニーに富んだ筆致でもって綴られ、それぞれの「ブツ」に対する詳細な分析と考察も相まって、読む者の興味を掻き立てられどうしだ。1行1ベージを追うのが実に楽しい。 しかし筆者が伝えんとする事は、更に深くて重い問題だ。酒(イエメベレント、アブサン)煙草(コイーパ・エスプレンディード)ドラッグ(コカ)というものに対しての、体に有害だからという押し付けがましい規制。米国による生チーズ(エポワス)食肉(クリアディリャスや生ハム)へのダブルスタンダードな輸入規制。クラッカー(ポピーシード)に至っては、品物そのもののレポより、それを持ち込んだシンガポールの過剰な管理社会に対しての疑問を投げ掛ける。そして終章において彼は、それらリスクがある(と、決めつけられる)嗜好品に対する行き過ぎた規制のナンセンスと悪循環、それを鋭く明瞭に論証し切っているのは見事と言う他は無い。自ら吐露する「俄かジャンキー体験」も、その説得力に一役買っているのだろう。 タブー、禁断であるが故の危うい魅力への誘い。それを通した社会批評。二重の読み応えが味わえる最近出色のノンフィクションの一冊!