32本のエッセイを収録しているが、その殆どが初の邦訳であるのが嬉しい。
前作「虹の解体」で反オカルトに乗り出したドーキンスだが、今作ではさらに歩を進めて明確な反宗教的姿勢を打ち出している。
また、政治的な発言や私的な交遊についての言及が多く、これまでになくドーキンスの人柄や素顔が前面に出ている。
ただし、各エッセイはそれぞれ個別の問題について述べているため、巧みに関連付けられて配置されているとはいえ、これまでの著作の様なテーマの一貫性には欠ける印象がある。
ドーキンスの他の著作を未読の人が読んでも面白いことは間違いないが、本当にこの本を楽しみたければまず他の本から読むことを強くお薦めする。特に「盲目の時計職人」と「利己的な遺伝子」は必読である。それらは必ずあなたを魅了するだろう。その上で本書を読めば「あのドーキンスはこの問題についてどう考えているのか?」という新たな視座を手に入れることができ、より深く楽しむことが出来ると思う。そういう意味ではこの本はすでにドーキンスの魅力に取り憑かれたファン向けの本であると感じた。
なお、収録されたエッセイは25年の間に様々なメディア上で発表されたものが中心だが、惜しくも収録できなかったものも多数あるとのことで、反響しだいでは続刊も期待できそう。進化や科学について扱った極上のエッセイ集として、終生良きライバルであった故スティーヴン・ジェイ・グールドのエッセイ・シリーズに替わって刊行し続けてほしい。