個人的には「獄門島」と並ぶ著者の最高傑作である。最初に読んでから25年以上経っているのだが何度読んでも飽きない。
著者の“推理”小説で扱われる題材は、古い因習が色濃く残る農村(岡山・長野)、戦後の没落貴族の血の因縁を描いたもの、そして東京を舞台にした一般人?を扱ったものの3つに分類されるが、中でも最も陰惨なのが没落貴族を描いた作品である。その代表的な作品が「仮面舞踏会」とこの「悪魔が来りて笛を吹く」であろう。前者もいい作品なのであるが、やはり推理小説としての出来が素晴らしいのは本作である。数多く張り巡らされた伏線が良く練ってある。言葉のイントネーション、登場人物の発する一言、小物の使い方、どれも素晴らしい。そして何より最後に明かされる「悪魔が来りて笛を吹く」の“意味”…。
著者の作品の特長の一つはセリフを読んだだけで誰が話しているのかがすぐにわかり、その人となりまでも表現してしまう“会話体の上手さ“である。これが作品を魅力的なものとしているのだが、この作品ではその特長が際立っている。この事件の捜査は東京と関西(神戸・淡路島など)をまたにかけて行われるのだが、東京からきた刑事(あるいは金田一)と関西弁を話す旅館の女将の会話などは素晴らしい。
金田一耕助は名探偵ではないという意見は結構ある。否定できない部分も確かにあるが、これ程数多くの人に愛された探偵はいないのではないか。
すでに古典とされる作品であり、粗探しをすればないこともないが、日本的な設定やトリックを描き続けた作家横溝正史が生んだ傑作の一つである。