横溝作品の中で唯一、過去にDVD化されていなかった本作が、ついに発売される。
この映画については「犯人が判りやすい構成」であることから、推理映画ファンからの評価は決して高くはない様だ。
しかし原作を読んだ方なら判るだろうが、この物語の内容は救い様の無い「地獄」である。
ゆえに、監督がこの作品を「推理映画」ではなく「人間ドラマ」として作ったと個人的には理解している。
配役は素晴らしく、鰐淵晴子の妖しい美しさ、石浜朗の崩れた退廃、清楚なヒロイン斉藤とも子、(個人的には)おきゃんで聡明な「菊江」を演じた池波志乃は絶品であり、他の出演者(小沢栄太郎、村松英子、二木てるみ等)も演技派の実力者ばかり。
西田敏行が今作限りの金田一役を演じており、石坂浩二扮するスレンダーな金田一と比べ違和感を感じる方もいるだろうが、物語の内容に救いが無い分、西田敏行の癒し感あふれる笑顔は得難い魅力で、悲劇に打ちのめされるヒロインを思いやる優しさを見事に体現していた。
本作を制作した頃の東映は「鬼龍院花子の生涯」の空前のヒットで息を吹き返す以前の状態であり、苦しい台所事情を反映して、美術・セットもチープ感一杯であるが、逆に終戦当時の物資の無い雰囲気が醸し出されて効果を上げている。
キャスティングも当時の「主演スター」クラスではなく(西田敏行も当時は新進俳優)登場人物のすべてを「脇を固める実力派俳優」のみを起用した事が、作品に深みを与えた。
まだ見ていない方々には、是非見てもらいたい「隠れた横溝映画の名作」である。