1968年の作品。「テルジー」の世界観と同じ「ハブ連邦」を舞台にした作品。本作の舞台は人類が支配している広大な銀河系連邦内でも辺境の水の惑星。この惑星には人類は住んでおらず、生物学の研究として訪れたナイル博士と彼女の恩師でもある長寿法の研究者ティコス博士の二人が連邦に侵略を企む異星人を発見するといった展開。単純明快に書けば、ヒロイン達が機転を利かして侵略者エイリアンを見事に撃退するというお話なのだが、それだけでは無い。まず、生物学に詳しい作者の描く、水の惑星に住む生物や植物の描写が巧み。でもこれだけなら想像力が素晴らしいSF冒険活劇で終わるのだが、しっかりと構築された世界観、人類に対する深い考察がその根底にはあるのです。テーマの一つとして「永遠の生、不死がその生命体が産み出す社会の発展継続に及ぼす影響」という所。侵略異星人達は不老不死の技術研究が進んでいる種族だが、人類政府は不死の研究をあえてしてこなかった。そして本作で敗れ去った異星人達がなぜ敗れたのかという要因がこのテーマに起因しているのです。「悪鬼の種族」とはもちろん外部から見た人類を表した言葉です。作者のシュミッツはドイツ生まれのアメリカ人で第二次世界大戦にも従軍しており、言わば激動の時代を生きた一人です。様々な体験を通して得た人類や世界に対する考え方が作品にも現れています。上のテーマだけで無く他にも様々な知見が見られます。ラスト20ページではその思考の片鱗が見て取れるでしょう。一見、単純なジョブナイル風娯楽SFに見えるシュミッツ作品。そうした娯楽性の表層の下に興味深い知性と洞察力を秘めた人間性を内包し、それでいて刺々しくならないといった稀有な才能。人類、世界、政府と民衆、見え透いた世界平和を語る物や不幸を語る物、不満や愚痴や嫌味だらけの風刺作品は腐る程あるが、こうした穏やかな人間性を持った作家は珍しくもあり素晴らしいと思います。