『歳月の書』シリーズの主人公アルドリックの故郷は、古い時代の日本を連想させる文化を持っている。刀を思わせる戦士の剣に戦いの作法。戦士は〈誉れ〉を何よりも尊び、恥辱にまみれるのを避けるため、自裁用の短剣を常に持ち歩く。
そんな国の豪族の子息であったアルドリックは、一族が滅び収めるべき土地をなくした放浪者となっても、そんな風習と伝統の鎖で自分を縛りつけている。彼は今や、自らの誇りのためにのみ戦う剣士なのである。
シリーズ二作目の本書では、仕えるべき国王の命によって、彼はある任務に就く。そのさなかで遭遇する悪鬼との対決、妖術のおぞましさの描写は本当におどろおどろしく、素晴らしい。
また、この手の物語の主人公には多い女性遍歴も、アルドリックの場合、他の女性と触れあいながらも、叶わなかった恋の相手に心をとらわれ続けている。そういう若者らしい人間くささも、アルドリックの魅力のひとつであるだろう。