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38 人中、34人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
信仰をもたない人間の危うさ,
By bluepasta (Brooklyn, NY USA) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 悪霊 (上巻) (新潮文庫) (文庫)
ロシア社会に混乱を引き起こそうとする地下組織。その結束を図るため、脱退者を殺害したという「ネチャーエフ事件」の史実を元に、ドストエフスキーが無神論的革命思想の成立過程およびその影響について探究した作品。この作品は、土地の有力者ワルワーラ夫人、その住み込みの家庭教師ステパンがそれぞれ、虚無と悪徳に憑かれた主人公スタヴローギン、その腹心ピョートルを産み出してしまう設定になっています。若い二人の教師であったステパンの愁いが、現行の秩序や神の存在についての疑義につながり、そんな教師をもった生徒たちがニヒリズムに突っ走る結果になるというのは、作者のロシア社会に対する皮肉でしょう。つまり、作品の根底に、ロシアにおいて、無神論はどこから生まれて来たのか、というドストエフスキーの問題意識があるのです。当時のロシアは、農奴解放令によって旧秩序が崩壊し、動揺と混乱の只中にありました。激動の中人びとは新しい秩序を模索しますが、無神論やニヒリズムに基づく行動規範は混乱を深めるだけです。ドストエフスキーは、信仰をもたない人間は、生き方の倫理的基盤が定まらず危うい、とこの作品で痛切に批判しているのです。その問題意識自体はきわめて現代的ですが、キリスト教の信仰という回帰する場所をもたない人は、この本を読んでますます途方に暮れることになります。 ドストエフスキー存命中は、この作品を理解するうえでもっとも重要と思える「スタヴローギンの告白」の章が、何度も書き直したうえでも作者が納得しなかったため、結局削除されていました(邦訳では、巻末に収録されているので読むことができます)。その一件でも分かるように、この作品は相当難産だったようで、文中から作者の苦しみが伝わってきます。「罪と罰」などと比べると、読みにくく難解であることを覚悟して取りかからなければならない本です。
12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
文豪が作り出した最も深刻な悪魔的超人,
By
レビュー対象商品: 悪霊 (上巻) (新潮文庫) (文庫)
ペテルブルクでは無頼どもの頭目であり、幼女を陵辱し、優れた知性も精力もありながら「自分はなぜ生きているのか」という意義を見出せず、自殺するスタヴローギンは、文豪が生んだ最も深刻な人間像である。個人的な読み方に過ぎないが、文豪の処女作「貧しき人々」の少女ワルワーラは、結局文通をしていた小役人マカールと別れ、金持ちブイコフに身を委ねる。そこでスタヴローギンの母親の名前もワルワーラである。母親は息子に会うと恐ろしい気分に襲われて直視できない。なぜか。この母親は処女作のいたいけな少女のなれの果てとして造形されたのではないだろうか。愛のない行為で出生した人間に存在意義を求めるのは無理である。まるでスタヴローギンは母親になった少女に復讐をしているかのようである。出版の際に削除されたチホンとスタヴローギンの対話は、信仰者とニヒリストとの直接対決であり、本書の圧巻である。文豪の作品の中でも完成度が高い。
38 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ものすごい,
By ガラガラス (横浜) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 悪霊 (上巻) (新潮文庫) (文庫)
解説等を読むと、本書はドストエフスキーの思想探求の結晶なんだそうな。
確かに、様々な立場の人物が登場して、それぞれの信条を滔々とまくしたてており、それが一方ならぬ印象を残す。 が、正直に言って、一回読んだだけではその思想を十分に理解することはできませんでした。 なにしろ神になるために自殺するなど、自分にとってあまりに異質な思考が展開されていたものですから。 にもかかわらず、本書をとても面白いと思うのです。 では、どこが? それは、多くの人物が次々と登場し、際立つ個性を主張しながらぶつかり合う、にもかかわらず、全体として統一された圧倒的なストーリーの流れが生み出されている点にあるのだと感じます。 まるで激しく波打つ奔流に飲み込まれるかのごとく、本書を読み進みました。 これだけ長大であるのに、少しも飽きることなく、一気呵成に読み終えられたのは、やはり本書が名作であるということなのでしょう。 というわけで、内容をよく理解しえたとは到底言えぬものの、しかし、そのものすごさを肌で感じた、と申しておきたいと思います。
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