このごろのキングは「セル」以外、私たちを怖がらせてはくれなかった。
上巻は予感に満ちているけれど、下巻を読み終えた今となっては、「めっちゃ」伏線が張り巡らされていた、というのが今の感想だ。読み終わって時間が経ってみると、平和なシーンがまた素晴らしい。主人口の独白の章、あれは何度読んでも素晴らしいし、キングをについてもっと知ることが出来る章でもあった。
前半の展開から、このままのんびりと終わるのかと思っていた。ところが、下巻の百数十ページ目から突如怪奇現象が起こりはじめたのだ。
私は遅読だが、下巻は二日で読み終えてしまった。上巻は六日も掛かったというのに。
私は邦訳されたキングの全作品を読んできたが、こんなに震えあがった作品ははじめてた。
「シャイニング」「ペット・セマタリー」をも越えた、圧倒的恐怖だった。
ホラー通でもある私は、長篇ホラーで震え上がったことはなかった(例外はジョー・ヒルの「ハートシェイプト・ボックス」と、ピーター・ストラウブの「ゴースト・ストーリー」)。
震えるのは短篇だけだと思っていたわけだ。しかし「悪霊の島」は怖い!
キングが原点に立ち返ったのだと、ストレートに感じることができた。
ここのところ私はキングの作品の質が落ちてきている(とはいえ、肩すかしを食らったことは一度もない)というか、勢いがないように感じていたけれど、KING OF HORROR(恐怖の帝王、あるいは恐怖のキング)が堂々と帰還したことを証明している。
日本においてクーンツよりも人気が下がってしまったような気もするキングだが、本書で(あるいは、文庫化されたときに)その立場が逆転することを願う。しかも近頃のキングは文学的な素晴らしさも備えてきているので、日本でもっと高く評価されてもいいように思う。とはいえ、「文学的」になっているだけで、そこはキング、エンタテイメント性も忘れていない。
本作からは、むかしみたいな、正面から我々に立ち向かってくるキングの姿が見えるような気がする。
なお、嬉しいオマケとして、クレムゾンキングとおぼしき姿の怪物が言及される。ファンには嬉しいことである。
最近落ち込み気味であったキングだが、この一作で「ホラー作家、キングは健在だ!」とあらためて感じた。おそらく全世界のファンもそうだったのではあるまいか。
勘違いされると困るので記しておくが、キングがホラー作家でなくなり、(ありえないけれど)たとえ純文学作家になってしまっても、私はキングのファンであり続けるだろう。
なにせ、私はキング中毒でなくなりかけていたが、今作でまたキング中毒になった。本書を読むまでは毎月一回、キング作品を読み返す程度の症状だったが、どうやら二週間に1回になりそうだ!
それくらい、本書は最高だ!
すぐにもう一度、本書を読み返そうと思う。
世界最高の作家、スティーヴン・キング。私は一生彼の作品を読み続けたいと思う。彼のせいで色々なものが怖くなった。私はキングのホラー長篇で、まだ私は無事だ。あまりの怖さに狂ってしまう日が来るかもしれないが、とりあえず今のところはキングのお陰で愉しい時間を過ごしている。まだ、いまのところは。