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悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
 
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悪童日記 (ハヤカワepi文庫) [文庫]

アゴタ クリストフ , Agota Kristof , 堀 茂樹
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (69件のカスタマーレビュー)
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ハンガリー生まれのアゴタ・クリストフは幼少期を第二次大戦の戦禍の中で過ごし、1956年には社会主義国家となった母国を捨てて西側に亡命している。生い立ちがヨーロッパ現代史そのものを体現している女性である。彼女の処女小説である本作品も、ひとまずは東欧の現代史に照らして読めるが、全体のテイストは歴史小説というよりはむしろエンターテインメント性の強い「寓話」に近い。
そもそもこの小説には人名や地名はおろか、固有名詞はいっさい登場しない。語り手は双子の兄弟「ぼくら」である。戦禍を逃れ、祖母に預けられた「ぼくら」は、孤立無援の状況の中で、生き抜くための術を一から習得し、独学で教育を身につけ、そして目に映った事実のみを「日記」に記していく。彼等の壮絶なサバイバル日記がこの小説なのである。肉親の死に直面しても動じることなく、時には殺人をも犯すこの兄弟はまさに怪物であるが、少年から「少年らしさ」の一切を削ぎ落とすことで、作者は極めて純度の高い人間性のエッセンスを抽出することに成功している。彼らの目を通して、余計な情報を極力排し、朴訥(ぼくとつ)な言葉で書かれた描写は、戦争のもたらす狂気の本質を強く露呈する。
凝りに凝ったスタイル、それでいて読みやすく、先の見えない展開、さらに奥底にはヨーロッパの歴史の重みをうかがわせる、と実に多彩な悦びを与えてくれる作品である。続編の『証拠』『第三の嘘』も本作に劣らない傑作である。(三木秀則)

内容(「BOOK」データベースより)

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

登録情報

  • 文庫: 301ページ
  • 出版社: 早川書房 (2001/05)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4151200029
  • ISBN-13: 978-4151200021
  • 発売日: 2001/05
  • 商品の寸法: 15.6 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (69件のカスタマーレビュー)
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16 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 いやいやぁ、びっくりしました, 2011/8/10
By 
たつなり - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)   
レビュー対象商品: 悪童日記 (ハヤカワepi文庫) (文庫)
なんにも知らずに、本屋さんにたくさんあって、それで読みました。
そういえば、この本よく見るよね、くらいの認識でした。

そういう予備知識を与えられないままに読めて幸せでした。

切り詰めた短文が重ねられ、文庫本で3,4ページのいわば寸劇のような
掌編小説のようなものがずっと並べられて一冊の本になっているのですが、
途中に、現れる、主人公二人のこの「日記」に対する姿勢・語りに
少年に似合わぬ精緻さを感じて圧倒され、事実を客観的に書く姿勢が
そこで示されます。
これから読まれる方のために、中身について書きたくない本ですが、
その姿勢で綴られる数々の出来事は、陰惨とか悲惨とか過酷とか、
そういう抽象的な言葉になるのですが、もちろんそんな言葉は使われません。

あくまでも少年の見た世界とそれについての語りだけで作られる本に、
読後は圧倒されます。

何も知らずに読んだだけに、これからまだまだこの人の本が読めるんだ!
と久々にうれしく思ったのですが、何と2011年7月27日に亡くなったのですね。
3部作といわれる、ふたりの証拠、第三の嘘を早速買いました。
全作品を読みたいと思う作家に出会えました。
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15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 生きる、ということ, 2010/4/3
レビュー対象商品: 悪童日記 (ハヤカワepi文庫) (文庫)
『悪童日記』は読みやすい。だが、刺激にみちている。
 文章は、短文の積み重ねで簡潔であり、各章は、文庫本で数ページ以下と極めて短く、子供の日記を思わせる。
 作品の時代は第二次世界大戦末期、舞台はナチス支配下の東欧の田舎町と推定される。
十歳にも満たない双子の兄弟「ぼくら」が都会の爆撃を逃れて、田舎のおばあちゃんの下に疎開する。けちで不潔、粗暴なおばあちゃんとの生活が、「ぼくら」を、抜け目のない、したたかな人間に成長させる。
 この作品には、おばあちゃんの半生記の趣もあり、「ぼくら」とおばあちゃんの関係が変わっていくさまは読みごたえがある。
 この世界には、善意もあれば、悪意もある。優しさも残酷さもある。飢えから、社会体制まで、そこで現実に息をしているものの眼で、彼らの生が描かれる。万引き、脅迫から殺人まで犯罪には事欠かない。戦時下の生活が、タブーなく映し出される。寡聞にして、日本の前大戦の戦時下の生活を描いて、この作品に比肩する作品を知らない。
 ためらいなく暴力が振るわれる過酷な環境の下で、「ぼくら」はどのような生活を送ったか?

「ぼくら、けっして遊ばないんだ」
「そんならあんたたち、一日中何しているの?」
「仕事をするのさ。勉強をするのさ」―― ぼくらの隣人とその娘

「ぼくら」の「仕事」、「勉強」、さらに「練習」の一連の行為は、極度に突き詰められたものである。「仕事」とは、生きるための具体的な作業である。「勉強」とは、自らの行為の規範を築くことである。「練習」とは、慣れにより、自己自身を、他者の眼で見る態度を身につけることである。
「ぼくら」の「仕事」、「勉強」、「練習」の一つ一つの徹底性が、「ぼくら」の世界の姿を、徐々に徐々に、しかしくっきりと映し出していく。

「ぼくら、贈り物を受け取るのは好きじゃないんです」
「そりゃまた、どうしてかね?」
「『ありがとう』って言うのが好きじゃないから」 ―― 靴屋さん

 平易な言葉で語られているからといって、その意味するものがわかりやすいわけではない。わかろうとしない者もいる。この作品の言葉のわかりやすさは、読者を説得するためのわかりやすさではない。曖昧さを残さない形で作者が考えつくした結果である。

「あなたたち、感じやすすぎるわよ。この際あなたたちにとっていちばんいいのはね、さっき見たものなんか忘れちゃうことよ」
「ぼくらは、どんなことも絶対に忘れないよ」 ―― “牽かれて行く”人間たちの群れ

「ぼくら」は、自分たちに都合の悪いことに目をつぶることがない。人々(ユダヤ人)が連行されていくときに起こった出来事を「絶対に忘れな」かった。そして、「ぼくら」は決して語られることのない、ある決断をする……。
 この作品を読み返すたびに、新たな発見をする。同時に、より深くなった闇を感じる。作者アゴタ・クリストフは、ハンガリーに生れ、亡命先のスイスで、フランス語のこの作品を書いたという。母語ではない獲得された言葉で、言語作品を書く。『悪童日記』の、一見子供向けの童話のような形態は、彼女がつかんだ世界に対するものの見方の、どのような言語でも変わらない骨格を想像させる。その筋肉、血液を思わせる文章には、内に抱え込んだ作者の体験の、善悪を超えた手触りを感じる。
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35 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 深く残る作品です。, 2006/1/24
レビュー対象商品: 悪童日記 (Hayakawa Novels) (単行本)
私が『悪童日記』を初めて読んだのは小6の時。

あまりの衝撃に、2晩ほどずっとこの本の事を考えていました。

戦争の中、淡々と語る何のモザイクのない「ぼくら」が見た世界。

その中で生き延びるための術。

読み終わったとき、何かが心に残りました。

今でも読み返す事が度々あります。

読んで良かったと思うと同時に、この本を買ってきた姉には本当に感謝してます。

読まなきゃ損。といっても個人的には過言ではありません。
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