ある者からは土地や屋敷を巻き上げ、ある者には偽の宝石を高く売りつける。
同時期に複数の男を手玉にとって誰にも自分だけだと思わせている。
貧しい生まれの女主人公が空気を吸って吐くようにつく嘘は、
他人だけでなく自分をも真実から欺く。
純粋無垢で何物にも汚されない虚言癖の女。
嘘と女の武器で、じょじょに成り上がっていき、
その頂点で謎の死を遂げるさまを、
多くの語り部によって順番に紡がせる物語。
語り部はいずれも彼女を崇拝していたり、迷惑に思っていたり、
未練たっぷりであったり、憎んでいたり、愛していたりと様々だが
殆どの人物が彼女の醜聞に対して「そんな筈がない」「あの人はそんな
人じゃない」と口を揃える。心底たちの悪いあっぱれな「悪女」なのだ。
そして、本人も語り部も語ってはいないのに、誰にも心を許していない孤独感が伝わってくる。
物を買ってもらう策略だの男を両天秤にかけるだの程度の「小悪魔」は
大勢いると思うが彼女のスケールはわけがちがう。女どころか男でも
絶対敵に回したくない悪女。こんな主人公をうんだ作者の力量にも脱帽する。一気に読破!