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悪名の棺―笹川良一伝
 
 

悪名の棺―笹川良一伝 [単行本]

工藤 美代子
5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (30件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

メザシを愛し、風呂の湯は桶の半分まで。贅沢を厭い、徹底した実利思考と天賦の才で財を成すも、福祉事業に邁進し残した財産は借金ばかり。家庭を顧みず、天下国家、世のために奔走。腹心の裏切り行為は素知らぬ顔でやり過ごし、悪くは“有名税”と笑って済ませた。仏壇には、関係した女の名が記された短冊を70以上並べ、終生、色恋に執心した。日本の首領の知られざる素顔。書き下ろしノンフィクション。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

工藤 美代子
1950年東京生まれ。チェコスロバキアのカレル大学留学後、カナダのコロンビア・カレッジ卒業。91年『工藤写真館の昭和』で講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 415ページ
  • 出版社: 幻冬舎 (2010/10)
  • ISBN-10: 4344019024
  • ISBN-13: 978-4344019027
  • 発売日: 2010/10
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.2 x 3.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (30件のカスタマーレビュー)
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54 人中、45人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
内容は面白い。一気に読めた。
やはりこの本の面白さは、笹川の人生そのもののスケールの大きさに起因しているのではないかと思う。
笹川と児玉誉士夫は、立ち位置がまるっきり違うのもよくわかる。

ただ、筆者の思い入れがにじみ出すぎいている感じがしてならない。
関係者の協力を得ているからなのかもしれないが、あえて文章上で笹川の肩を持たなくても、事実の積み重ねで筆者のいいたいことは表現できたのではないかと思う。
それを表現するのがプロの仕事ではないか。

また、日本船舶振興会設立のくだりが、真相を知る関係者はなくなっているという趣旨の記述で、非常にあっさりとしている。
この部分は、やはり最も知りたい部分であり、もう少し書き方があったのではないかと思う。
これに比べ、今回初めてインタビューに応じたという、京都の女性の記述が長すぎる。
初めてのインタビューだから長く書きたかったのかもしれないが、冗長な感じは否めない。
また、若干の誤植も見受けられた。

とはいえ、面白かったことは確か。
とっつきやすい笹川伝が少ないことを考えても、読む価値は十分にあると思う。
このレビューは参考になりましたか?
23 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By INAVI トップ1000レビュアー
本書が、著者の力作であり、これまで大きく伝えられることのなかった笹川良一さんの純粋な私生活にスポットを当てた点では評価したい。しかし、その他の部分、一般に笹川良一さんについて知りたい部分の扱いの薄さをみると、小学生向けの「伝記」の域でしか私には認められない。

「笹川良一伝」とあるが、著者が笹川良一さんでない以上、これは「自伝」ではない。しかし、「評伝」かと、一般に「評伝」として評価の高い作品と並べれば、客観性、多面性、評価の出来などの大事な点で著しく見劣りする。

既に先達のレビューでも多く指摘されているが、以下の点は、工藤美代子という能力・意欲あるノンフィクション作家が、一般からは離れた、特殊な思想信条世界向けの御用作家になってしまっている感を強く受ける。

1.笹川良一さんの活動を支えた資金の源泉が、データもなにもない株式投資などで済まされている。
2.戦後も長く太くあったとされる政界や表に出づらい社会との関係への言及は殆どない(正直、何をしている人かすら本書のみからは明らかではない)
3.三文芝居のような会話主体の挿入部分は、事実や伝え聞きの再現なのか、著者の想像なのかが曖昧。
4.その曖昧さを利用して、東京裁判史観批判や軍人えらいぞ的な著者の私見がモロダシになる部分は正直痛すぎ。
5.インタビュー先が笹川一族と関係者のみ、批判を加える他の評伝への客観的論拠も何ら示されていない。
6.裏金を巡る田中・児玉との暗闘など情報の分かれる事実の検証が全く不十分。

「評伝・笹川良一」であるならば、巷間言われる「悪名」自体を軸に据え、幅広い関係者と客観的な事実を揃えて、その上で、評価すべきものだが、本書は笹川良一さんの私人としてのエピソードが良き人であることのみを以って「悪名」を否定しようとしている。こうした不出来な作りのものはいくらもあるが、ずーっと前に観た「プライド」という戦後の東条英機を主役にした映画を思い出した。
このレビューは参考になりましたか?
17 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By nacamici トップ1000レビュアー
右翼、A級戦犯(容疑者)、政界フィクサーという、世間に定着した笹川良一像を壊すことが本書の第一の目的と思われる。そしてそれは十分に達成されている。笹川は明治の末に大阪の裕福な造り酒屋の家に生まれ、物心ついたころの日本は日露戦争の勝利で湧いていた。若くして父を亡くし、現在でいえば数億円にあたる遺産を継ぐと、それを元手に商品の先物取引などで大儲けし、20歳後半には30億円に匹敵する富を築く。その後日本は、関東大震災に端を発する不況を経験し、世界恐慌に巻き込まれていく。市場が混乱し、ロシア革命の脅威が迫るなか、笹川は31歳のときに国粋大衆党(のちの国粋同盟)を結成し愛国運動に没頭する。戦後はA級戦犯容疑者として巣鴨に収監されるが、釈放され、その後は戦犯遺族の救済や慈善活動に力を入れた。その規格外の資金調達力、政財界への人脈、人を動かしことをなすという意味での政治力によって、上記のような「陰の実力者」という像が定着した。著者が笹川に関する「通説」を否定しているのは主に以下の点だ。

○ムッソリーニとの会見→日独伊三国同盟とは関係ないものだった
○ロッキード事件被告の児玉誉士夫との関係→児玉とは金銭感覚に埋めがたい溝があった
○陸軍機密費裏金疑惑→児玉誉士夫、田中隆吉の捏造(笹川自身は裏金を受け取る必要がないほどの資産家であり、逆に政府に利用されることを嫌った)
○箔付けのためにA級戦犯容疑者になろうとした→アメリカの情報力の過小評価
○競艇で得た金を慈善事業に使うという偽善→金は己の理想を実現する「手段」
○金に汚い→脱税はじめ金銭で躓いたことは皆無。

工藤は笹川が戦犯およびその遺族救済やハンセン病撲滅活動などにどれだけ本気で取り組んだか丁寧にひも解いている。また、裏金疑惑の疑惑たるゆえんもアメリカ側の資料を引きながら、説得力のある筆で証明しようと試みている。本書を読むと、笹川の金は「生き金」だったといわざるを得ない。増やすためだけの金儲けではなく、使途があるからこその金儲けしかしなかった。莫大な金をもっと増やすために投機にはしるヘッジファンドの隆盛を見たら笹川はなんというのだろうか。この本に記されている以上の巨額の金をたえず動かしていたことは確かだろう。それだけの金のあるところが平穏であるはずもなく、フィクサー、ドン、といった役割も当然果たしていたと思われる。裏切りや欺きにあった回数もその傷の深さも常人の理解を超えているだろう。後年には側近中の側近、藤吉男にも裏切られた。生涯にわたって何人もの女性との関係に執着したのは、どこかによりどころがほしかったからなのか。著者は最後の愛人、41歳年下の大津法子(仮名)との関係に一章を割いている。どこぞの色欲教祖のような執心ぶりだが、他の女性に対してしてきた自分勝手な仕打ちをこの女性への奉仕で総決算しているようにも思えなくもない。しかしそれにしても本書に書かれている三人の息子とその母喜代子への無関心は薄情そのそのものだ。世間で博愛主義をとなえる父親を覚めた目で見ていた息子の気持ちもわかる。これだけの金を動かし、人を動かし、監獄に二度入り、何十人もの女性と奔放に付き合いながら、「出る杭を叩く」ことに血道をあげる人間に事欠かない日本において、己の思うところに従って生き抜き、日本の政治経済および国民生活にその足跡を残し、天寿を全うしたのはあっぱれともいえる。こういう人間はこれからも滅多なことでは出てこないだろう。戦中、戦後という混乱の時代が生んだ怪物である。相場師から憂国の士への転身の経緯についてあまり書かれていないことは不満であるし、やや笹川に肩入れしすぎの解釈もあるにせよ、生きているときは「右手で汚れたテラ銭を集め、左手で浄財として配る」と酷評され、死してなお「『カネがすべて』という戦後日本人の考え方を作った人」などと言われた笹川の「実物大」の人物像を描くという気の遠くなるような大仕事に挑んだ著者の勇気は称えられるべきだと思う。
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