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悪人
 
 

悪人 [単行本]

吉田 修一
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (182件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。

内容(「BOOK」データベースより)

保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。

登録情報

  • 単行本: 420ページ
  • 出版社: 朝日新聞社 (2007/4/6)
  • ISBN-10: 402250272X
  • ISBN-13: 978-4022502728
  • 発売日: 2007/4/6
  • 商品の寸法: 18.8 x 13.6 x 3.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (182件のカスタマーレビュー)
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33 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 読後感は非常に重く、つらいのですが, 2007/8/27
レビュー対象商品: 悪人 (単行本)
傑作です。
吉田修一は、パークライフ以来、ずっと読み続けていますが、この作品で突然変異をおこしたようです。
これほど「凄み」を感じた作品は久しぶりです。
序盤の、石橋佳乃視点のパートは、不愉快極まりなく、のろのろと読んでいたのですが、清水祐一パートに入ってからは、一気に入りこみました。
この本の中に、老人を足かせに地方の町に縛りつけられた、感情の表し方を知らない、祐一が確かに存在しました。
地方の閉塞感、気だるい空気、見えない鎖のようなもの…あの吉田修一が、こういう世界を、人間を描ききるとは思いませんでした。
佳乃の父親の激白部分や、祖母の「正しいことをやらんね」という語りかけには涙を禁じ得ませんでした。
これは、この作家にとって、大きい分岐点となる作品です。
この若さで、これだけのものを世に出してくる、吉田修一恐るべし、という一冊です。
これまでのところ、大きく引き離して今年のナンバー1です。
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68 人中、64人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 優しさって、本当はこういう事なんだ、って思える内容, 2010/12/23
レビュー対象商品: 悪人 (単行本)
読み応えのある小説は「レ・ミゼラブル」以来です。 

最後の方で止め処なく自然に溢れ出る涙を拭うことも忘れてしまいました。

自分を捨てた母親に対して、金をせびる祐一。 
自分を捨てた母親が「負い目」を抱いている事を感じ取って、母親の負い目を軽減させる為に、本当は欲しくもないお金をわざわざ母親にせびるという行為をする祐一の気の使い方。 
これで母親は「負い目」よりも、母親に祐一に対する幾ばくかの「嫌悪感」を持たせることによって、「負い目」を忘れさせてあげることができた。 

灯台の管理小屋に警察が入ってくる間際に光代の首を絞める祐一。 
この場面を見た警察官は「光代はやはり脅されて、連れ回されていたんだ」と信じる。 
殺人犯である自分を恐がりもせず「一緒に逃げよう」と言ってくれる光代。
祐一にとって心を許しあったかけがえのない人だからこそ、自分が捕まった後のことを考えて、光代に犯人隠避の罪や、他人からの誹謗・中傷・罵倒を受けたりしないようにとの思いから為せる祐一の言動・行動はあまりにもやさしくて、切ない。
結果、光代は会社にも戻ることができて、普通の生活を営むことができて、祐一が光代に与えてあげることができなかった「幸せな生活」を得ることができる。
 
最後の部分で逆説的に光代のことを酷く語っているのは、光代がその話をどこからともなく聞き及ぶだろうことを予想して、「オレのことなんか忘れて幸せになってくれ!」との祐一の叫びだった。 
もし最後に至って、まだやさしい言葉をかけたり、抱きしめたりという行動を取っていたなら、光代は祐一を忘れることができず、普通の生活を取り戻すことができない。

でもこれらの優しさは祐一が頭で考えてした行動ではなく、本能のまま自然と出てくる優しさなんだろうと思う。 
本当は無骨なんかじゃない、無私の愛を与えられる祐一は本当に優しい。
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25 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 心を揺さぶられる, 2011/3/7
レビュー対象商品: 悪人 (単行本)
良かった。映画で理解し切れなかった全てが読み解けた。
小説の方が素晴らしいと思える部分と、映画の方が凄いと思える部分が、それぞれあって、どちらも完全ではなく、両方を経験するのがベストだと思える、不思議な作品だった。

映画のラスト近くになって、追いつめられた祐一が光代の首を絞めるところが、どっちの意味か、はっきりと分からなかったので、すぐに小説を買って読んだ。 「やっぱり」というか何と言うか、私が、そうであって欲しいと思っていた方の理由だった。いや、そうとは書いてはいなかったけれど、私は、はっきりとした確信を持ってそう読みとった。
光代を大切に思うからこそ、彼女を「殺人犯と逃走したバカな女」ではなく、「完全な被害者」として、自分のいない現実社会に返してやったのだ。 あの瞬間、狂おしく愛した女のために自分ができる最後のことを、力の限り、してやったのだ。

光代の最後のモノローグからは、祐一の偽りの証言に揺れる彼女しか見えず、「そうじゃないんだ!なぜわからないんだ!」と叫びたくなるような歯がゆさしか感じられない。後味が悪くてどうにもいけない。 性善説を信じる甘ちゃんの私は、映画のラストシーンの方を強く支持する。

祐一が実母にお金をせびるエピソードは、ラストに繋がる重要な伏線となっているんだけど、ちょっと出来過ぎの感があって、あまり好きではない。そんなに気の利く男なら、こんなことにはなってないよ。
祐一が風俗嬢に手作りの弁当を差し入れる場面では、不覚にも泣いてしまった。
風俗嬢の戯れ言を真に受けて、2人で住むためのアパートを借りる、という、わけの分からない痛さと唐突さが、友人が語るところの「起承転結の間がなくて起と結だけいきなりある」という祐一の全てを物語っていると思う。
この風俗嬢との一件が、祐一という人物を語る上で、何よりも重要な鍵だと思う。
祐一は、出会う全ての女に、乱暴なほどに、心も身体も、恐ろしいほどに、全てを全力でぶつけることしかできない、どうしようもなくバカで不器用な男なのだ。
そんな男が、母の罪悪感を軽減するために要りもしない金をせびり続ける、というのは、どうにも矛盾していて受け入れがたい。そんな器用な男であるはずないじゃん。

一方、被害者の佳乃は、父親の姿が切ない。 佳乃は、無惨に殺された上に、不名誉な事実を晒されてしまった。
嫌な思いさせてごめんと言う佳乃と、嫌な思いなんてしとらん、おまえの為ならどんなことも我慢できる、と言う父。
殺されても仕方のないような軽薄なビッチ、という見方に捕われた読者の心を、「あ!そうだようね。大切なひとり娘だよね。被害者だよね。ごめん、ごめん」と引き戻す、良い場面だった。
どのような娘でも、「お前は悪くなんかない」と全力で守ってくれる親がいることを、生きているうちに知れたなら、彼女だって、違う生き方をしただろう。 それまでの自分を悔いるチャンスが与えられていたなら!

心をいろんな方向に揺さぶられて、どうしたら良いのかまだ整理がつかない。そんな作品だった。
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