傑作です。
吉田修一は、パークライフ以来、ずっと読み続けていますが、この作品で突然変異をおこしたようです。
これほど「凄み」を感じた作品は久しぶりです。
序盤の、石橋佳乃視点のパートは、不愉快極まりなく、のろのろと読んでいたのですが、清水祐一パートに入ってからは、一気に入りこみました。
この本の中に、老人を足かせに地方の町に縛りつけられた、感情の表し方を知らない、祐一が確かに存在しました。
地方の閉塞感、気だるい空気、見えない鎖のようなもの…あの吉田修一が、こういう世界を、人間を描ききるとは思いませんでした。
佳乃の父親の激白部分や、祖母の「正しいことをやらんね」という語りかけには涙を禁じ得ませんでした。
これは、この作家にとって、大きい分岐点となる作品です。
この若さで、これだけのものを世に出してくる、吉田修一恐るべし、という一冊です。
これまでのところ、大きく引き離して今年のナンバー1です。