最も参考になったカスタマーレビュー
21 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
十分に面白かったが原作の方が好き, 2011/10/30
以下、ネタバレありです。 十分に面白かった。 とはいえ、原作を読んでいる人間からすると、祐一が悪人なのか?という所がどう描かれるか?が一番のポイントだと思う。 その選択を一気に迫られるラスト。 原作ほどの衝撃はなかった。 エピソードとして、祐一が光代と出会う前に通い詰めた風俗嬢との再会シーンを省略してしまったことが残念。 彼女の証言から出る、無口な祐一が悪人を演じることで相手を庇う姿や、朴訥とした性格など、原作ではそこから祐一の人間性や、自分に負い目を持つ相手に対して敢えて自分が悪人の汚名を被って相手を守ろうとする優しさを描いていたように思う。 そういった意味では本と映画での尺の違いをクリアできなかったことが少しだけ残念。 もしくは、ラストまでその迷いを受け手に与えない為に、敢えて映画から外したか?? 原作を読んだ上とはいえ、個人的にはラストで祐一が光代の首を絞めるのは、駆けつけた警察に対して、光代は自分を匿った人間ではなく、自分が誘拐した人間であることを見せつける為だと思っている。 それは、警察に対してだけではなく、光代自身にもそう信じさせて、自分が居なくなった後に完全に自分を恨むように仕向ける一つの優しさだと思う。 だからこそのラストでの豹変ぶりで、一気にその思いをぶつけて欲しかったのだけれど。 とはいえ、意を決した祐一の流暢な喋り口と狂気の表情はなかなかのいい演技だった。 モントリオール映画祭で最優秀女優賞を取った深津絵里の演技もさすがに素晴らしかった。 自分にも他人にも真面目過ぎて、人との踏み込んだ接し方が出来ずにどこか自信が無い雰囲気。 そういった女性が自分を受け入れてくれる男性を見付け、また秘密を共有することで、何処までも尽くしてしまう姿をしっかりと演じている。 光代のように常識に満ちた真っ当な女性というのは身近に思い当たる人がいるが、彼女ののめり込む姿が浮かんでしまい、のめり込むほどに危うさを感じて共感してしまった。 他にも演技力に一定の評価のある役者を並べたこともあり、見応えのある演技が多かった。 祐一の母親の樹木希林、その母親をだます松尾スズキなど。 個人的にはバスの運転手を演じたモロ師岡は小さな役所ながら、強烈に印象の残る演技だった。
118 人中、88人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
本当の寂しさを知る者だけに分かる映画, 2011/1/23
昨年の映画の中ではナンバーワンです。 「悪人」というタイトルに惑わされますが、 これは「孤独」をテーマにした映画です。 「孤独」は人を突き動かします。孤独の背景は人それぞれです。 「孤独」から逃れるために人はもがきます。 監督は本当の孤独を知っている人なのかもしれません。 全編を通して「孤独」の描き方が完璧です。 特に主人公の妻夫木君が本当の愛を感じ取って行く流れが 丁寧に描かれています。そしてその愛を再び失うときに 彼はもはや孤独ではなく愛を身に付けた人になっています。 わたしは妻夫木君が毛布を抱きしめて、愛する人の残り香を 求めている場面が好きです。お金だけでつながっている女性の 画像を携帯で繰り返し見る場面と対照的です。 すべての場面が丁寧で良いのですが、すべてを描きたいためなのか 場面展開が少し早くて、「あと1秒か2秒」足りない場面をがたくさんありました。 愛されている幸せの中ではありふれた「朝日」さえも こんなに美しく感じるものなのかという感動を 表情で演じる妻夫木君はすごいです。 賛否ありますが、真の孤独を知っている人には 深く心に残る映画だと思います。
29 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
大切な人はおるね? その言葉が胸に沁みる, 2010/12/21
レビュー対象商品: 悪人 スタンダード・エディション [DVD] (DVD)
やるせないほどの愛情で結びつく男女を、体当たりで熱演する妻夫木聡と深津絵里が素晴らしい。深津絵里がモントリオール映画祭で主演女優賞を獲ったのも納得。本作は、主人公と彼が殺人犯だと知って一緒に逃げようとするふたりの『愛の逃避行』であるわけですが、彼らをめぐる人々の群像劇でもあります。 祐一の祖母を演じる樹木希林がさすがに素晴らしい。純朴な老人を狡猾に騙す悪徳業者や、執拗にカメラを向けるマスコミに狙われる祖母は、最も弱い人間に思えますが、孫の祐一を心から慈しむ気持ちが、最後には彼女を強くする。また、身勝手な娘だとしても無条件に殺された我が子を愛する父。演じる柄本明がこれまた素晴らしい。 そして、責任感皆無の人を見下すことでしかプライドを保てない甘ちゃん大学生。岡田将生は、こんな役もできるんだと思わせる好演でした。満島ひかりも、殺されてしまう自己中女を見事に演じきっています。その『小悪魔ぶり』と『うざさ』は、祐一を正当化するに足るほどです。 もちろん、殺人犯の祐一は悪人です。宣伝文句の「誰が、本当の悪人か」の答えもさることながら、『悪』の位置づけの変化を感じます。 それは、どんな理由であれ、殺人は悪いことで、祐一も、それは悪だとわかっていた。でも、当初は、それは祐一にとって悪かったと思っていない“客観的な悪”だったのですよ。それが、光代と出逢い、彼女を大切に想う気持ちが芽生えてから彼にとって、客観的だった悪が、“主観的な悪”に変わった。被害者に心から申し訳ないという『罪の意識』心の目がひらいたということじゃないでしょうか? そしてラスト、いよいよ逮捕の時が迫ったとき、祐一は恐るべき行動をとります。これには、さすがに仰天しますが、その結果は後日談のような静かなラストシークエンスで明らかにされます。 映画を観終わった後には、よどんだ澱(おり)のような暗い感動が残ります。それでいて小さな希望を感じるのは、祐一が祖母にプレゼントしたスカーフが、殺人現場に結ばれていたから。それとも、悲しい眼をした祐一が最後に泣いたような笑顔を見せるからか。彼女の為に『悪人』になってやる事。愛する人を“被害者”として守るためにあんなことをしたからか。 被害者の父が“大切な人はおるね?”と語りかける一連の言葉が耳に残ります。
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