以下、ネタバレありです。
十分に面白かった。
とはいえ、原作を読んでいる人間からすると、祐一が悪人なのか?という所がどう描かれるか?が一番のポイントだと思う。
その選択を一気に迫られるラスト。
原作ほどの衝撃はなかった。
エピソードとして、祐一が光代と出会う前に通い詰めた風俗嬢との再会シーンを省略してしまったことが残念。
彼女の証言から出る、無口な祐一が悪人を演じることで相手を庇う姿や、朴訥とした性格など、原作ではそこから祐一の人間性や、自分に負い目を持つ相手に対して敢えて自分が悪人の汚名を被って相手を守ろうとする優しさを描いていたように思う。
そういった意味では本と映画での尺の違いをクリアできなかったことが少しだけ残念。
もしくは、ラストまでその迷いを受け手に与えない為に、敢えて映画から外したか??
原作を読んだ上とはいえ、個人的にはラストで祐一が光代の首を絞めるのは、駆けつけた警察に対して、光代は自分を匿った人間ではなく、自分が誘拐した人間であることを見せつける為だと思っている。
それは、警察に対してだけではなく、光代自身にもそう信じさせて、自分が居なくなった後に完全に自分を恨むように仕向ける一つの優しさだと思う。
だからこそのラストでの豹変ぶりで、一気にその思いをぶつけて欲しかったのだけれど。
とはいえ、意を決した祐一の流暢な喋り口と狂気の表情はなかなかのいい演技だった。
モントリオール映画祭で最優秀女優賞を取った深津絵里の演技もさすがに素晴らしかった。
自分にも他人にも真面目過ぎて、人との踏み込んだ接し方が出来ずにどこか自信が無い雰囲気。
そういった女性が自分を受け入れてくれる男性を見付け、また秘密を共有することで、何処までも尽くしてしまう姿をしっかりと演じている。
光代のように常識に満ちた真っ当な女性というのは身近に思い当たる人がいるが、彼女ののめり込む姿が浮かんでしまい、のめり込むほどに危うさを感じて共感してしまった。
他にも演技力に一定の評価のある役者を並べたこともあり、見応えのある演技が多かった。
祐一の母親の樹木希林、その母親をだます松尾スズキなど。
個人的にはバスの運転手を演じたモロ師岡は小さな役所ながら、強烈に印象の残る演技だった。