私は、列伝中、「蘇我入鹿」伝が一番好きだ。
ただ悪人をあらわしているのではない。
蘇我氏は先祖代々、大陸からの文明を積極的に受け入れる進歩派であった。
仏教の受け入れも、ほかの保守的な豪族とたびたび摩擦を起こしている。
仏教について、氏は、
「仏教には建築・彫刻・絵画・刺'・織縫などの技術が付随している」と書いている。
仏教といえば、いまの私たちからみれば「古臭い」イメージだが、
氏のおかげで、仏教が思想ばかりでなく当時最先端の技術であり、
きらびやかな文明・文化の伝来であったことを想像できて新鮮だった。
小説を読むときも予備知識として役立つ。
たとえば、司馬遼太郎氏は「石田三成」が大好きだが、
海音寺氏は別な見方をしている。
比較できるので、
歴史小説に対して、客観的に一定の距離でみることもできる。
この列伝を読むと、
なにか物知りの学校の先生に教わっている気がして、
心地よい。