「悪」の理由を遺伝的に解明し、悪の本質を暴く魅力的な本。あるいは、優生学とも結びつきそうな危険な香りのする本。かと思い読んでみましたが、どうやらタイトル負けしているように感じました。
反社会的な人物の脳の構造や活動の様子が克明に調べられ、そうではない人と違った構造・活動をしているという事実は興味深くもあり、よく理解できるところです。しかし、それが遺伝的な原因であるとする論証には乏しく、タイトルとの乖離を感じました。
本書にもあるのですが、「どうやら反社会的な人物は、あらかじめ「道徳的に盲目」となる傾向を組み込まれて生まれてくるようだ。」というレベルの話までで、遺伝子にまでは踏み込めていませんでした。
脳の形成や、活動の傾向についても数多くの遺伝子が関わっているはずで、そう簡単に説明できないの当然で、僕が期待しすぎたのかもしれません。
しかし、魅力的な本ではありました。最も興味深かったのは「邪悪な成功者」の性格分析です。著者の姉と毛沢東がその例として挙げてあります。
姉については本書の冒頭にその蠱惑的な人物像が描かれ、その分析に大いに期待したところでしたが、全くの尻すぼみでした。ほとんど接触がなかった姉ですから、やむを得ないところでしょう。著者が本書を書く動機になった人物の紹介、というレベルでしょうか。
最終章の毛沢東については、性格の変遷とその分析は興味深く、大変面白いものでした。本書の中では一番面白く読めました。この章を読めたので、本書の購入に後悔はありません。
ただ、当然なのでしょうが、毛沢東の脳にも遺伝子にも関連した記述はありません。残念。