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タイトルは「悪について」となっているが、「悪」だけについて語られているわけではない。奥深い、とてつもなく奥深い内容の本は様々な読まれ方をされてよいのであって、本書もまた一つの精神分析を手法とした人間洞察の本であるにもかかわらず、人生論に満ち、使ってみたいアフォリズムにあふれ、そして人間そのものを考える手法へのヒントを、真剣に人を見抜きたいと願って本書を読む者に与えてくれる。
日本・日本人はいまどんな状況にあるのだろうか。人間としてひどい退化の現象であふれているのは間違いなさそうである。不安と孤立と疎外と混沌の中にあって、皮相な宗教や哲学やイデオロギーに救いを求めるのをやめて、この本とじっくり取り組めば、私は、生きる技法を得られると思うし、実際、個人的にも気持ちは安らいでいる。
原著と比べてはいないが、日本文を読む限りにおいて、鈴木重吉氏の訳はうまい。奥付の履歴を読むと、納得できよう。
かなり読みやすい本で、人文系の本によくある、奇妙な難しさと、無意味さはないが、再読に値する。
ーたいていの人は生きる技術に失敗するのは、彼らが生まれつき悪であるとか、よりよい生活を営む意志を持たないからではなく、彼らが覚醒することなく、いつ分かれ道にさしかかり、決定すべきかを見透しえないからであるということを示しているー
私のように人生が取り返しのつかないところに、行く前にこれを読んで、正しい選択を行って、よりよい生をお楽しみください。
ちなみに。この本で取り上げられた、テーマは彼のその後のほんである「破壊ー人間性の解剖」において 科学的広げ、深められている。
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