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5つ星のうち 5.0
小川徹の慧眼−−抵抗者と大衆の共存と言ふ視点, 2007/12/13
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この映画の中に印象的な科白(せりふ)が有る。それは、主人公(三船敏郎)が、当初は利用する積もりに過ぎなかった公団総裁の娘(香川京子)に愛情を抱いてしまった際、同志(加藤武)の前で口にするこの科白である。−−「悪を憎むと言ふのは、大変な事だ。・・・」 この映画は、公開当時、批評家からは高い評価を受けなかった様である。黒澤明監督の賛美者である佐藤忠男氏なども、この映画には少々批判的である。(佐藤忠男『黒沢明の世界』三一書房・1969年参照)そんな中で、異色の映画評論家として知られた小川徹(1914〜1989)は、この映画を高く評価した。小川徹によれば、この作品は、悪に対して抵抗を試みる抵抗者と、悪との戦ひなどしようとしない平和愛好的な大衆が、いかに共存するか?と言ふテーマを描いて居ると言ふのである。(小川徹『日本映画作家論』三一書房・1965年参照)悪に戦いを挑む抵抗者と、悪を恐れ、戦ふ事を躊躇する大衆の対立と言ふ図式は、『七人の侍』にも見られる構図であるが、黒沢作品に流れるこうしたテーマ−−抵抗者と大衆はいかに対立し、共存するか?−−に着目した小川徹の視点は、実に秀逸であった。 ところで、私の知人で、政界に詳しい人が、こんな事を言った事が有る。−−「政界って、本当に人が死ぬからね。『悪い奴ほどよく眠る』みたいな事が本当に有るからね。」−−恐ろしい話である。映画の最後に掛かって来るあの電話は、何処から掛かって来たのだろうか?・・・・・ (西岡昌紀・内科医)
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5つ星のうち 5.0
黒澤の全盛期、日本映画の全盛期, 2007/11/22
レビュー対象商品: 悪い奴ほどよく眠る<普及版> [DVD] (DVD)
脂の乗り切っている頃の黒澤明の傑作。何せこの後に「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」と続くのだから、物凄い充実期だ。どれか一本を撮れただけで、黒澤以外の監督なら生涯の最高傑作になってしまうであろうハイクォリティの名作が並ぶ。 しかし、この作品は黒澤の写真の中では異色作の部類かもしれない。黒澤は例えそれまでの展開やテーマが重苦しくても、最後に一抹の希望と救済を垣間見せる作品(「酔いどれ天使」「羅生門」「静かなる決闘」等)が多く、ここ迄絶望的な、何の救いもない作品は珍しい。 正にタイトルが全てを象徴している映画と云える。 特筆すべきは森雅之の老けメイクによる怪演(?)で、主演の三船を完全に喰ってしまっている。 葬儀のシーン等におけるパン・フォーカスもいつも通り絶品。本当に黒澤は骨太でありながら、繊細な映像作家だ。 突き放した様なラストには、背筋が凍りつく思いがする。
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5つ星のうち 3.0
優れた脚本を、豪華キャストで、鶴橋監督が演出しても標準的な水準の作品にしかならなかった, 2009/2/15
もし、黒澤監督の映画「天国と地獄」がこの世に存在せず、オリジナル脚本としてこのドラマが放映されれば★は4〜5でもいいと思うが、やはり名作映画のリメイクは簡単にはいかない。 黒澤監督の死後、ここ数年のリメイク・ブームは今の若い人に黒澤明という偉大な映画人がいたことをアナウンスする意味はあったのかもしれないが、リメイク作品のほとんどがオリジナルとの比較を抜きにしても標準以下の出来なのはどうしたことだろう。 黒澤監督はいい脚本がないと名作は生まれないと言っていたが、もしかしたらリメイクを作る人達はみなアンチ黒澤で、脚本が優れていても演出や演技や音楽が3流以下であれば絶対に名作は生まれないことを証明したかったのだろうか?と思うような作品ばかりだった。 そんな中で唯一の合格点(傑作や佳作ではなく標準点という意味)だったのは、この作品だけで、鶴橋監督の演出よりも俳優陣が善戦していたのが印象に残る。 佐藤浩市は中井貴一と並んで2世俳優でありながら今の邦画界ではもっとも演技の優れた俳優だと思う。三船の権藤に較べれば線が細いが、現代に置き換えた場合はむしろあの役作りで正解ではないか。阿部寛は善戦だが仲代のクールで有能な刑事像にはおよばなかった。鈴木京香はオリジナルの香川京子もそうだったが役として印象が薄かった。そのほか平田満、橋爪功、杉本哲太らの脇役の演技も悪くなかった。しかし妻夫木聡の犯人役は大きなミスキャストで、その風貌、服装、髪型などはとても(佐藤浩市のいる天国に対し)地獄のような環境におかれているように見えず、山崎努とは比較の対象にすらならないほど違和感があった。 所々に面白いシーンがあったが、鶴橋監督がこれだけの実力派キャストで演出しても凡作の域を出なかったのには失望した。もう黒澤作品のリメイクはやめた方がいいと思う。
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