9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
徹底したリアリズムとラストの編集。これぞ映画です。, 2011/9/3
レビュー対象商品: 息もできない [DVD] (DVD)
久しぶりにちゃんと「映画」「cinema」を見たって感じ。
芸術的観点からいってもストーリー性からいってもまれに見る完成度の高さだと思う。
韓国の貧困層に焦点をあて、徹底したリアリズムを追求して
暴力は暴力を産むって悪循環の中で苦しむ人々を描いた作品。
この主人公がまたすごい。
ほんまもんのチンピラかと思わせる迫力のある演技。
鋭利なナイフのようで、そのナイフによって自分自身が一番傷ついているってこの手の映画の黄金パターンなんだけど全く臭くなく自然でリアル。
演技だけでなく、カメラワークにもよるのでしょうか?
劇的、ドラマチックにならないようにドキュメンタリー手法でとられているような感じが逆にリアルで効いています。
それとラストの編集にやられました。
*ここからは、ネタバレになるんでこれから見る人は読まない方がいいです。
この手の話は絶対幸せになれないって相場が決まっているのでネタばれというまでもなく予測できた事なんですが
暴力で身を立てていた主人公が足を洗ってまともになろうとした矢先に殺されてしまうって展開。
この監督の力量が発揮されるのはここからだった。
通常は主人公が殺されて終わるか周りにいた人々が嘆き悲しむ様子が映されるかいずれかのパターンでエンディングだと思うのですが・・・。
>まず路上に一人転がり死にそうな主人公から急に画面が切り替わり。
>いきなり、主人公の友人が新しくはじめた焼き肉屋で主人公の友人や家族が楽しそうに集う場面が映されます。
でも、そこには肝心の主人公の姿はなく、
そこに集っている人達は主人公を介してでしか知り合いになれるはずのない今までのシーンでは全く繋がりのなかった人々なのでそこで観客はあきらかに未来のシーンを映している事に気づく。
皆、すごく幸せで楽しそうで、落ち着くとこに落ち着いた様子。
だが、はたして主人公はどうしたんだろうか?もしかして奇跡的に助かったのか?
>と、観客が疑問に思いはじめた途端にまた画面が切り替わる。
>そこで今まで幸せそうに焼き肉を突っついてた人達が泣き叫ぶシーン。
めちゃくちゃになって泣いて叫ぶクローズアップされた顔からカメラがひくと病院の一室かどこかで白い布がかけられた遺体が・・・。
>そこで、初めて観客は主人公の死を知るんです。
つまり、一度主人公のいない未来を見せてから過去のシーンにもどったって事です。
この時系列、順番の入れ替えがものすごい効いていて、観客は泣かずにはいられない状態に持っていかれます。
これぞ編集の力。天才的です。この監督はただものじゃないなと思いました。
カメラワーク、キャスティング、編集どれをとっても完璧で久しぶりに映画の魔法を見せられたようでした。
7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
☆もうひとつつけよう, 2011/8/11
レビュー対象商品: 息もできない [DVD] (DVD)
ストーリー的にはシンプルだし、音楽がほとんどというか全くないので、言葉一つ一つが直球で飛んでくる。誤魔化しゼロで彼や彼女の言葉が伝わってくる。そんな映画。人によって感じ方は様々だとおもうが、感動したとか、泣けたとか、そういう次元ではなく、ただ息をしたり唾を飲んだりするのを忘れてしまう程に、彼や彼女の言葉に自分が憑依されてしまう?様な映画だった。
19 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
今更言うまでもないが, 2011/2/21
レビュー対象商品: 息もできない [DVD] (DVD)
Amazon Vine 先取りプログラム™ メンバーによるカスタマーレビュー (詳しくはこちら)
既にレビューも出そろっているだろうから今更言うまでもないが、傑作である。
ぐらぐら揺れるカメラワークを多用する映画は9割がたただ見づらいだけになるが、役者の演技を邪魔せず寧ろ引き立てるよう非常に計算された演出が素晴らしい。
アクション、或いは暴力と言っても良いが、そういう描写はただ残酷であればいいわけではない。映画における感情表現は目に見える形で行わなければならず、それは悲しそうな顔をアップで映せばいいというものではない。そういう意味で、この映画は暴力を感情表現として扱っている。そこが良い。
単に陰惨な話で終わらせず、あちこちで独特の笑いを交えるオフビートさも良い塩梅で、それすらも後の展開に向けた布石になっている。言葉で言えば簡単だが、それをここまでピリピリした緊張感を持って描いた作品はそうそうないだろう。
役者のハマり具合も凄いと思う。芝居の呼吸、テンポのひとつひとつがちゃんと映画の一部として100パーセントの力を発揮している。
こういう言い方はどうかわからないが、韓国語の独特の発音というのがこの映画の緊張感やユーモアの印象に貢献しているのではないかと感じた。他の韓国映画でも同じことが起こるわけではないから違うかもしれないが、この映画を観ている間中韓国語特有の語尾の伸ばし方、トーンの上がり方が非常に映画的な快感を持っているように感じた。ひとつのマジックなのかもしれない。
言うまでもなく、絶対にお勧めの一本。2010年の映画を語る上で、これははずせないだろう。