動物の細胞はすべて必要なエネルギーをATPの形で蓄えるが、ATPを合成するには酸素が不可欠である。従って、動物にとって、いかに効率的に酸素を体内に取り入れ、それをいかにしてすべての細胞に行きわたらせるかは、文字通り死活問題である。本書は最近明らかになってきた過去6億年にわたる大気中の酸素濃度の推定値をもとに、カンブリア紀から白亜紀にいたる動物の繁栄や衰退、絶滅と進化は、酸素濃度の増減が主要な原因になっているとする論説である。邦訳のタイトルは「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」となっているが、これはあくまでもその中の一つの話題に過ぎず、鳥の飛翔そのものについては論じていない。鳥類が非常に効率的な呼吸をするために必要であった気嚢システムは、その祖先である竜盤類恐竜が三畳紀の低酸素濃度を乗り切るためにすでに開発していたものだったというのが著者の主張である。
訳は残念ながらあまり分かりよいとは言えない。とくにp.250に、小惑星の落下による白亜紀末の大絶滅が「6億5000万年前」となっているが、これはいくらなんでも非常識なミスだ。