長編とまではいかないけれど短編でもない、文庫版の実話怪談には珍しい少し長めの話が続く。
見た、聞いた、そんな単純な話ではなく、体験者はすべて訳もわからないままに
その事象のど真ん中に否応なく放り込まれ、なす術もなく途方にくれる姿が見て取れる。
そしてその事が話をより身近に感じさせると共に、怖さを増している。
霊感があるとか、見えるとか、そういうことが全く関係ない怪談。
ちょっと周りに聞いてみれば似たような話が出てくるかも、というような話。それがとても恐ろしい。
はっきりとしたオチがない話がほとんどで、通常はフラストレーションのたまるであろうこの事が逆に気味の悪さを煽る。
なぜなら、ごく普通の人間が体験する怪談なんて、その多くが「実はこうこうでした。」などと
明快なオチがつくものではないであろう事に納得がいくからだ。
後日談が、間に別の話を挟んで展開されるのも面白かった。
短編も好きだけれど、読み応えのあるこういった長い話もいいと思う。
更なる後日談があれば、ぜひとも続編をお願いしたい。