不動産屋の女性から、いわく付きの物件にまつわる怪談話を御披露したいという連絡を受けた「私」が、雑居ビルの五階にあるバーで、女性の書いた七編の「作品」を順に読んでいく、という設定の限りなく短篇集に近い連作長篇です。
作者の本領が存分に発揮された七つの短篇はいずれも高水準の仕上がりを見せており、それだけでも十分に読む価値はあります。しかし、枠となるストーリーは信じられないほど稚拙で、長篇としては失敗作です。
プロローグはともかく、「間奏」の章は全くの蛇足です。これだけの作品を書き上げたのだから、自信を持って、黙って読者の前へ差し出せばよいのに、一品ごとに厨房からシェフがのこのこ出てきて、下手くそな説明をされては、せっかくの料理が不味くなろうというものです。そして、このバカバカしいエピローグ。これを読んで怖がる読者がいるでしょうか。
これからの読者には、プロローグや間奏はとりあえず無視して、七つの短篇だけを、眠る前に一日一話ずつ、じっくりと読むという方法をお勧めします。