1975年高木仁三郎を中心に原子力に依存しない社会の実現を目指して設立された非営利の調査研究機関が、1999年9月30日の東海村JCO臨界事故の直後に著した60頁ほどのブックレット。原子力はその巨大なエネルギーゆえに経済的・軍事的に注目されたが、安全性確保のために細心の注意と多額のコストを必要とする。そのためにヨーロッパでは脱原発、グリーンエネルギー開発の動きが活発であるが、それに対しいまだ原発に固執しているのが地震多発国で唯一の被爆国である日本であることは皮肉である。しかし日本では安全面での配慮が十分になされているとはとても言えず、それが近年の原発事故の多発で表面化している。その点について東海村事故を例に論じたのが本書である。この事故においては、状況の把握や情報伝達が決定的に遅れ、防災資材が欠け(形状管理も不備)被害を測定・評価するシステムも機能せず、事故後の現場管理体制もできておらず、事態収拾のための体制の不備(判断主体・命令系統が不明瞭)も明らかであった。その背景には、「事故などありえない」と決め付け原子力防災について真剣に考えてこず、恣意的な安全審査で満足して原発を推進してきた政府の姿勢と、コスト削減のために安全管理に関わる人員を削減してきたJCOの方針があったと著者は言う。この指摘の正しさは、2004年8月の美浜原発事故からも立証されると思われる。反原発の姿勢が明確であるが、60頁ほどの分量の中で、東海村事故の詳細、核燃料サイクルの説明、原子力産業の現状、原子力に関わる法の問題、エネルギー政策の根本的転換の必要性とそれにたちはだかる壁の存在等を論じている本書は、入門書として適切だと思われる。いくら資源面で原発にメリットがあろうと、人命に勝る「対案」はありえまい。