皆さんが書かれている通り、小説としては練りが甘く、名手マイクル・クライトンがいったい‥と思ってしまう。人物がステレオタイプでストーリーも”犬も歩けば棒に当たる”的、なんだか007の映画みたいなところもある。
しかしこれを地球温暖化問題の解説書と見れば秀逸である。この種の問題を扱う本では、ともすれば感情的な議論が先立つものだが、そこはさすが科学的思考のトレーニングを受けた者にふさわしく、客観的で信頼できるデータを豊富に引用して(具体的な引用文献が記してあるので、自分で原典を確認できる)あくまで客観的、科学的思考に徹している。
この話の結論は、「地球温暖化という問題は、存在するのかしないのか、今の科学的データでは判断できない。存在するとしても、その原因が二酸化炭素の増加であることを示す確実なデータはない。先進国が、近代的で快適な生活を大幅に犠牲にして二酸化炭素の排出を必死に削減しても、地球の気温に与える影響はほとんどない。」というものである。環境保護運動とやらに熱心な方々も、ぜひ虚心坦懐に一読することをお勧めする。CO2の25%削減などとのたまう某国の政治家たちにも必読の書である。
実はこの本は、”あとがき”でさらに根本的な問題を提起している。近代社会は常に一般大衆に恐怖を与える何かを提供し続けている。かつては優性学であり、冷戦であったのだが、後者が終結したいま、環境問題に置き換えられたというのだ。確かにメディア、政治家、官僚、学会、一部産業界などが集団ヒステリー的に地球温暖化を叫び、それに疑問符を付けようものなら袋叩きに遭いかねない雰囲気がある。マイクル・クライトンが本当に言いたかったのは、このことである。