怪人や怪物が登場するわけではない。
連続殺人鬼が跳梁跋扈するわけでもない。
それなのに、このスリル、サスペンス。
爆薬のニトログリセリンをトラックで運ぶ、というだけのメインストーリーで、なぜこれだけの緊張感なのだろう。
タイトルは恐怖だが、まさに恐怖の作品である。
そして、本作を傑作たらしめているのが、モノクロの陰影の強い映画ということだ。
基本的に昼間の場面が多いのだが、その強う日差しとのコントラストで、暗い、真の闇というべき夜の何という不安だろうか。
歌手のイヴ・モンタンが出演しているというのは、最初に見た高校生時代には知らなかったが、ドライバーにひとりとして、いい味である。
いい男だし。
クルーゾー監督の作品は、「悪魔のような女」も同様だが、人間の心理の不安定さを恐怖の源とするところに特徴がある。
見せて、実物で驚かす昨今のサスペンスものと違って、見せないことで不安感をあおるのだ。
そのあたりの塩梅が、とてもうまい。
まさにクラシック・サスペンスの名作であり、傑作だ。
のちにリメイクもされたが、リメイク版はカラーだし、サスペンスを醸し出す演出も今ひとつだった。
男どももスマートじゃなかったし。
とにかく、ニトログリセリンといったら本作だ。
間違いなく、画面から目が離せない作品である。