マスコミの情報を見聞きする限り、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加しないと自動車や電気製品などで関税の違いで韓国などに差を付けられる、勿論農業分野ではマイナスになるがメリット、デメリットを考えると参加すべきではないかと漫然と思っていた。
しかし、この本を読んでみるとそんな単純ではないことが分った。経済産業省が主張するメリット、農水省が主張するデメリット以外に数々の問題点があることを著者は指摘している。実は医療、福祉、教育、法律、金融、通信など様々な分野でアメリカのスタンダードに従わされてしまう。
急成長を遂げるアジア太平洋地域ではすでに170もの経済協定が締結されているが、その殆どから締め出されているアメリカとしてはTPPは起死回生の戦略なのである。協定の案文はアメリカに極めて有利なものになっている。
しかもこれらの疑問点に対して政府はまともな説明をしていない。正月の福袋を買うわけではないので、中身の分からないTPPに賛成しろと言われても答えようが無い。地方自治体も慎重で2011年1月時点でTPPへの参加について反対あるいは慎重な対応を求める意見書や特別決議を採択した都道府県議会は39都道府県に上っている。
当初のTPPの参加国のニュージーランドではTPPに対する反対の署名活動やデモ行動が頻繁に展開されているが、何故か日本のマスコミでは殆ど報道されていない。日本の郵政民営化のときに「民営化はニュージーランドに学べ」がスローガンになっていたが、その時ニュージーランドでは過激な民営化の失敗を認め、すでに民間に売却していた国のインフラ企業である、航空、鉄道、電力などを再度国有化していた。何でもアメリカ流に自由化、規制緩和をすればよいと言うわけではなく、日本なら日本の国情に合わせた施策が必要である。
TPPに参加する場合にアメリカは日本の遺伝子組み換え作物に関する規制を非関税障壁だと主張する可能性は高い。その場合モンサントのような種子会社に日本の農業が依存せざるを得なくなる可能性がある。TPPは医療、福祉、教育、法律、金融、通信などのサービス分野でも自由化を要求するので、これらの分野でも日本らしさ、日本精神が損われる可能性がある。
政府もマスコミももっと国民に情報を示して十分議論を尽くす余地を与えるべきだと思った