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あと、前半の山場である「あなたの名前を火星へキャンペーン」で、最初は不満タラタラだった関係者が、ハガキに書かれたメッセージを読んで次第にモチベーションを高められていくシーンもいい。日本の宇宙開発における的川氏の存在が、いかに重要かがわかるエピソード。
しかし、その盛り上がりも、打ち上げ後に次々と襲いかかるトラブルへの対処に比べたらものの比ではない。まったく、地味~な軌道計算が、こんなにカッコよく描かれていいのか。地味が得意(?)な谷甲州でも、こんな描写は書けまい、というくらいカッコいい。これを学生に読ませたら、軌道計算屋志望者が街にあふれるよ!
もちろんその後の、かの有名な1bit通信から、スイッチON/OFFによるリミッター焼き切りまで、ギリギリまで粘って先へ進もうとする技術者たちの奮闘は、本当に涙なしには読めない。最終的に火星周回軌道への投入は失敗したわけだが、ここまでやったんなら、これだけの経験が積めたのなら、いいじゃんと思う。この経験はきっと「次」に活かされるわけだし。一国民としては「次」の実現を世論で後押しする、それだけだ。
しかし、そのどれもこれもが、全く恥ずかしい発言だったと、この本を読むと思い知らされる。
「のぞみ」は、開発中も、宇宙に飛び立ってからも、あらゆる理不尽を飲み込んで、何度も何度も限界を超えて、火星まで行った、「十分、十分過ぎるほどよくやったすばらしい」衛星だった。
開発者達は、その理工学方向に優れ過ぎる頭ゆえか、はたまた、立派な人特有の謙虚さからか、単純に、忙しくて面倒臭いだけか、口ベタだ。
この本は、「のぞみ」に『人生をのみこまれた』尊敬すべき口ベタな関係者と、われわれ素人との、橋渡しをしてくれる本である。
また、それのみならず、衛星の入門書であり、宇宙開発の経緯をおさらいできる歴史書であり、現在の日本の宇宙開発環境の厳しさを伝え、今後どうあるべきかを問う白書であり、とどめに、なぜ宇宙開発が必要なのかを考えさせられる哲学書(?)でもある。
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彼は、「それは・・・事情を知らない人にそういうことは言われたくないです」と答えた。それまで明晰かつ落ち着いた口調で「のぞみ」の運用を説明してきた早川だったが、この答えだけには一瞬強い怒りの感情がにじんだ。(P427)
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ここを読んだとき、それまで胸に充満し続けていたものが、ついに耐え切れず、一気に目頭にツーンと抜けた。
本を読んで泣いたのは、はじめてです。