大詰めのカタストロフィーに向かって疾走する宿命の悲劇を、劇場に座って観客席から眺めている気にさせられた作品。作者が描いた60点ほどのイラストが作品の中にちりばめられていたのが、本書の魅力を間違いなく高めていました。さらさらっと描かれたコクトーのデッサン、よかったなあ。
二歳年上の姉エリザベートと、弟のポールとの、近親相姦的な愛の悲劇が、この作品の主旋律を奏でています。このふたりに、ジェラール、ダルジュロス、アガートといった人物がからまり、姉弟の間に協和音と不協和音を生み出すという構図。登場人物のなかでは、運命の糸を紡いでゆくエリザベートの存在感が大きく、実に魅力的でした。本作品を映画化したジャン=ピエール・メルヴィル監督の作品(1950)では、ニコール・ステファーヌという女優がエリザベートを演じています。
さらに、ポールを精神的に支配している同級生のダルジュロス。コクトーのイラスト「雪の球を丸めるダルジュロス」で、きりりとしたハンサムな美少年として描かれていた人物。巻末の中条省平さんの解説の中に、≪三島由紀夫もこの人物を偏愛していた≫と記されていましたが、このキャラクターにも大きな魅力を感じました。
ところで、訳者の中条省平さんの解説文。実に的確にこの作品の魅力の骨子を明らかにしていて、素晴らしかった。あまりに明晰な分析がされているので、コクトーの小説読了後にお読みになることをおすすめします。