本作品は私が初めて野沢氏の作品に触れたものだ。
もうだいぶ以前の作品だが、ふと手にとって買わずにいられない本だった。
そして通勤の友となった。
私は今年の初頭に離婚した。
子供がいた。
子供を媒介に、彼らのように頻繁に行き来し会うことはしないが、いつしか元夫婦で毎日連絡を取るようになった。
互いの悩みなどの話もするようになった。
世間的には良くないことなのだろう。
紙切れ一枚とは言え、法に認められた別れをした二人なのだから。
しかし、我々はこの本の主人公である、理一郎・はるが言ったように‘余力のあるまま’離婚してしまっていたのだ。
離婚とは本来、関係を絶つということでもあり、互いに互いの将来には関与しないものだ。
いや、思い出すのもイヤ!という言い方のほうが良いかも知れない。
ただ、ある決定的な事項があって別れたのにも関わらず、関係の続く元家族・夫婦は私のように存在する。
そして、理一郎・はるの関係のように、互いに腹の探りあいをして疲弊する。
登場人物の一人、喜多嶋が言うように離れた人間の心理を読もうとすることほどキツイものはない。
結末はともかく、共感できる方も多いのではないだろうか?
周囲が優しすぎるとの感想もあるが、真髄は元夫婦の心理戦だ。
星が4つなのはこのようなある意味特殊な経験をしたものでは分かりえない。
ただ、経験した者にしか共感を得られないのではないか、と考えたため。[
この本の主人公や私のように、‘気持ちを残しながら’別れた男女にはお勧めする。
なお、本作と‘離婚後の関係’を扱ったものに重松清氏の「幼な子われらに産まれ」
幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)もある。
なかなかないジャンルだけに、いずれもお勧めの作品である。