読書というのは、読んだときの年齢や自分が置かれている場によって、同じ本でも受け止め方、感じ方が全く違うものになります。その意味で再読が必要なのです。再読によって自分の変化を感じることができるからです。しかし再読に堪え得る作品はそんなにないのが現実ですが。
本作は数年ぶりの再読。今回もやはり終盤にきて作者にやられてしまいました。恋愛を扱った物語のなかでも秀逸な出来栄えです。恋愛物はビタースゥィートに限ると思っておりますが、本作はビターのなかのビターだけを純粋に抽出して取り出した、常人には真似できない作品となっています。読んでるそばから頭の中を映像が駆け巡ります。恋愛は怖い、人間をダメにする無限の力が秘められている魔物です。ちょっとのお互いの感情のすき間からその恐怖は広がっていきます。その先に何があるのか、本作はそこを追求しています。その追求は真剣であるからこそ読者である我々は目が離せなくなるのです。
20代後半以降の男女は必読です。物語の波に乗っていくことも出来るし、自分だったらと考えながら読むこともできます。そこに新たな「自分」を発見することが出来うる物語であると思います。
林真理子さんの解説も本物の「解説」です。物語を読み終えてから、解説を読むと物語の理解が深まること間違いなしです。