フランスのパリに隣接するモントルイユ市の国立演劇センターでは、子どもたちの啓蒙のための講演会が定期的に行われています。これらの講演の多くは「小さな講演会」というタイトルが付けられたシリーズとして出版され、本書はそのシリーズの一冊で、フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシーが「恋愛」について語ったのをまとめたものです。
大上段に語るのではなく、ナンシーは実に気さくに、ユーモアを交えて語り、また子どもたちの質問に真摯に応答しています。
ナンシーは恋愛にまつわるごく当たり前の言動を出発点として、それらが実はそれほど当たり前ではないこと、答えが出ない大きな問題につながっていくことを示唆していきます。
ナンシーは孫のような年頃の聴衆を前に、誰かを「狂おしいほど愛する」とはどういうことなのかを真摯に語ります。そして、そのことから話を展開し、誰かに愛を告げること、愛すると約束すること(同時に約束はそれが破られる可能性も内包していなければならない。なぜならそのリスクがないなら約束の必要などそもそもないのだから)、永遠の愛がありうることを丁寧に、やさしい語り口で語ります。
本講演の聴衆は10〜15歳の子どもが中心ですが、大人が本書を読んでも得られる示唆は豊富にあります。今、誰かと恋愛関係にある人、失恋した人、今は良い人が与えられない人、どんな人にも愛について多くのことを発見する手引きとなってくれるでしょう。
本書もまた、ナンシーが本物の哲学者であることを、つまり当たり前のことを当たり前と思わず、立ち止まって問いを発し、考え、同時に当たり前に驚き、知の所有者ではなく、知を愛する者であることを存分に示しています。