ドラマには不倫、離婚、死などやや非日常的な展開がつきものです。そこに魅力的な主人公、華やかな舞台設定、美しい風景などをちりばめ見る側の関心を惹くように作られるのだと思います。この点、「恋人よ」は典型的なドラマとも思えます。その展開は尋常でなく激しいものです。結婚式場や新居での偶然な出会い、不倫の発覚、出産、離婚、闘病、そして主役の4人が再び心を通わせるラストまで「安心して」見られる場面はほとんどありません。予定調和のドラマを見慣れた私には、当初一見幸せな生活を棒に振った4人が痛々しく思え、後味の悪さを感じていました。
しかしさらなる幸せを将来に向け追い求める気持ち、対して過去をいとおしく思う気持ち、いわば心の焔は誰にでもある。状況によっては、本作のように胸騒ぎを覚え、一線を越えてしまいたい思いに衝き動かされることもあるのではないでしょうか。それぞれの感情表現が秀逸です。何度も見返した今は、当初思った痛々しい感じはしなくなり、自分の気持ちに忠実にあろうとして無理な行動に出ながらも、別れた人を最後まで思いやるような複雑で奥深い心の動きを、肯定的に捕らえたいと思っています。
鈴木保奈美が演じる愛永の心の焔が、周囲を巻き込み状況を一変させてしまう様には目を見張るものがあります。秘めた情熱を燃え上がらせたものの、愛する人に理解されず、重い病気にもなり、彼女は深い孤独に陥ります。しかし、その後彼女がかけがえのない人であると気づいた者たちは恩讐を越えて、彼女の余生を最高のものにしようと再度集まります。
映像とセリフの放つ強い説得力は、見るものの関心を惹こうと細工された「ドラマ」のレベルではありません。三浦半島や沖縄の美しい映像をバックに、役者としてピークの時期に撮影された主役4人の充実した演技を味わうことのできる秀作です。