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短編、中編とりまぜた五つの収録作品。なかでも面白く読んだ作品は、「天の鹿」と「べにばらホテルのお客」でした。
「天の鹿」は、頭の中に何か鮮やかな映像が浮かぶような、映画「千と千尋の神隠し」でも見たような味わい。印象的な絵がいくつも心に残ります。とりわけ、ラストに描き出された絵の美しさは忘れられません。
「べにばらホテルのお客」は、作家の若い女性が話の中に飛び込んで、登場人物のひとりとして過ごす物語。出てくる動物や小道具のキャラも印象に残ります。
巻末の三つのエッセイ。安房さんのお人柄が伝わってくるような素敵なエッセイです。作品に親しんだ後で読むと、味わいもまた格別なものがありますね。爽やかな空気を文章に感じました。
『熊の火』は、うだつの上がらない青年が、山の中で、同じように熊の世界から逃れて火山の煙の中で暮らす熊のその娘と結婚して、子供までできるのですが、その生活にも満足できず、また、人間世界に帰ってくる物語。
つまり、恋人たちというのは、人間と動物なのです。『熊の火』以外は、恋人たちは結ばれるのですが、私は、奇妙でふしぎな物語という思いがしました。
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