女性ネタを欠かせたら両横綱的な直木賞作家・唯川恵と角田光代をトップと留めに据え、
しゃばけでおなじみ畠中恵、恋愛小説の旗手として飛躍中の小手鞠るいと朝倉かすみ、
そしてこれからの伸びしろが楽しみな原田マハとヴァシィ章絵、と、非常に
おさまっている作家のバランスがいい感じでばらけている恋愛アンソロジ−。
バラエティにとんでいるのは作家の顔ぶれだけではなく、その「かたちといろ」。
ラブストーリーってこんなにパターンがあったんだ、と思い知らされる感じ。
それぞれの作家が、得意ジャンルで描いた充実の作品が収まっている。
真面目な女性が恋愛ではうまくいかなくて悩む唯川作品、どこか気の抜けた
緊張感のない日常の空気の中でもドラマを描く角田作品。畠中さんは
しゃばけのときのテンポのよい語り口がきいてるちょっとテレビドラマに
なりそうな小粋なラブコメ。原田作品は結婚前の乙女心のゆれ、という
王道テーマを意外なベクトルに引っ張る意欲作。ヴァシィさんのは、
社宅という閉塞された世界で主婦が出会ったささやかな幸福を描く
(これ、すごく好きでした)。朝倉さんは、母娘2代の幸薄い女が
肩のちからをふっとぬいていく希望のある話。小手毬作品のヒロインも
少し頑張り屋さんすぎるゆえ、恋愛を始めるときも真剣勝負だ。
このバラエティぶり、表紙のキャンディがちらばった写真以上に
にぎやかで華やかなのです。お行儀良く似たキャリアの作家さんが
並んで、似たトーンの作品が揃って、というアンソロジーじゃないので
飽きがこなくていいですよ。