漫画などでは、よく音が文字として書き込まれます。カサコソ、ダダダ、じーっ、カタカタ、サラサラ……。その音だけで様々なことが伝えられます。小説などでも、へたな描写より擬音をひとつ書き込んだ方がわかりやすいことがよくあります。
本作は、それらの音を通じて人の心を描いた14本のショートストーリー集です。そして半数近くが恋にまつわるものです。
何気ない日常や会話に紛れ込んでいるそれらの音。この手の話だと、ついついドラマチックに描いてしまい、クサくなってしまいがちです。しかし、作者は本当に何気なくそれらの音を日常の情景として描き、ギャグをからめて脱力させ、読後をほんわかした気持ちにさせてくれます。
思わず目を閉じ、普段なら聞き逃すような音に注意するほどに。
収録作品で特に気に入ったのが、最近彼女のできた友人に熱い視線を向け続けるクラスメイト(表紙の女の子)に気がついた高校生を描いた「じーっ」 つらい片思いを描いた話かと思いきや、見事にほんわかでこっぱずかしい、そしてどストレートな着地をしてくれました。