有吉氏が「フェルメール・ラバー」であることは本書を読んで
よく伝わってきます。でも、有吉氏と一緒に、世界各地に散らばった
フェルメール作品を心情的に一緒に「見に行く」旅行という感情移入を
満足させられるほど、描かれている文章表現は、リアリティや臨場感が
伝わってこないのは残念です。
著者が自由な時間とお金で、フェルメール(やその他の芸術家の足跡)の
作品を求めてあちこちの著名な美術館を走り回っている様子しか読み取れない。
「好きです」「すごいんです」はわかりますが、深い考察や
著者がなぜそこまでフェルメールに心酔するのか、の開陳のひとつの
欲しいところです。
また、他のレビュアーの方が指摘されているように、解説代わりに
挿入されている作品がモノクロだし、写真があまりにも小さい。
本書を読むには、事前にたとえば、第一人者である小林頼子氏の
フェルメール入門書などを読んでおくか、手元に画集などを置くか
して読み進めないと、なかなか不便な思いをしそうです。
いづれにしても、著者のように、自由に世界中を飛びまわれない
ほとんどの読者にとっては、一種の憐憫、嫉妬心を強く抱き
つつ、同時に、「一枚の絵画を見るために、海外まで足を伸ばす」
という道楽があってもいいんじゃない?という、気づきと免罪符を
得られたような気持ちで、楽しむことができます。
とにかく、紀行文で評論という内容でこの価格であれば、
できれば、巻頭に、作品の紹介(できればカラー写真)とか、巻末に
参考文献の一覧のひとつも欲しいところです。