性的対立の本。性的対立とはオスとメスの進化上の利害にズレがあるためにおきる競争関係のこと。昔はプロの生物学者の間でも、種の繁栄のために繁殖はオスとメスの仲良しこよしな共同作業だと考えられていた。けれども60年代にこの考えのマズさが指摘されて、オスとメスの間にも激しい競争があり、それは協調と同じくらい重要だと考えられるようになった。最初は理論的な分析だったが、80年代には実験・野外観察を通して理論のただしさがわかり、最近では分子・神経レベルでの解明も進みつつある。
性的対立は広い意味では性選択の一部なので、最初に有性生殖の起源と性選択、ついでに自然選択も簡単に説明される。そこからは動物のさまざまな求愛行動、縄張り戦略、トレードオフ、精子競争などが紹介される。
性的対立について日本で初めての本…と言っているが長谷川真理子の『
雄と雌の数をめぐる不思議』のようにわりといろいろ出ている。長谷川本は理論色がより強くしかも幅広い現象を扱っているのに対して、本書は理論の細部よりも実際の動物行動に焦点が当てられているのが特徴。乱婚性シカネズミには精子レベルで血縁間の協力があるのに単婚性シカネズミにはそれがない、などおもしろい発見がたくさん取り上げられている。表現が下世話なところがあったり、いちいち人間社会と絡めた与太話に話がずれるのはどうかと思うが、ご愛敬だろうか。