葉室麟の短編小説集を初めて読みました。この作家の
長編小説はモチーフが横に拡がり、しかもどこも内容が
濃いので息がつけずわたしは苦手でした。それに対しこ
の短編集は起承転結がはっきりし、適度にアクセントの
強弱がついてなじみやすくとてもよかったです。
内容は、与謝野蕪村の遺した俳句をヒントに彼と友人
の円山応挙、そして蕪村の家族や弟子達の出来事を創
作したものです。著者の想像力と洞察力が短編という形
式にまとまり、読み応えがあります。蕪村と応挙の老いら
くの恋の行方や弟子の大魯の粗暴の顛末、どれもひとす
じ縄でいかぬ我執のあり様を、さりげない筆で書き切り深
い味わい(見返しに和紙を使った装丁も見事です。)があ
りました。
ここでは、応挙に弟子入りした夫婦の意外な結末を綴
った「牡丹散る」の悼尾を飾った句を掲げておきましょう。
牡丹散てうちかさなりぬ二三片