山田風太郎先生の作品を10の短編集に纏める企画の8編目の「怪談」選集。独自の奇想が楽しめるが、怪談を描いても妖美な持ち味が光る。同時に本格ミステリ味の合理的なアイデア、人生をシニカルに見つめる目が作品に深みを与えている。
「人間華」において、人間の永遠の愛(命)を植物化によって実現すると言うアイデアは当時としては珍しかったろう。妖しくも隠微な作品。「笑う道化師」は"笑えない"道化師に纏わる煉獄談。哲学的作品「永劫回帰」に秘められたアイロニーも鋭い。「うんこ殺人」は「神曲」をベースにしたユーモア味の濃い破天荒な作品で山田先生にしか書けないものだが、作中に込められた人間批判が光る快作。「万太郎の耳」はR.ダール風奇妙な味に因果談を加えたもの。「双頭の人」は一見平凡な恋愛模様と見せかけて、最後に男の価値観に峻烈な一撃を浴びせる秀作。「呪恋の女」の題材は時代を遥かに先取りしている。「畸形国」は今なら発禁だろうが、内容は逆に差別思想への風刺である。「蝋人」は男の性的イデアを、隠れキリシタンを背景に夢幻的に描いた本領発揮の一作。「二十世紀ノア」以降はSFが続く。特に、「臨時ニュースを申し上げます」は昔読んだ懐かしい作品で、戦争直後の時代背景を巧みに利用した創り。いずれの作品も、"科学の進歩は人類の幸福の総量を増やしたか"と言う問い掛けが鋭い。巻末には児童向けの作品も載っている。
上述の通り、「怪談」では括れないバラエティに富んだ短編集である。大部でもあり、山田先生の異形の世界にドップリ浸れる魅惑の作品。