未だに「福澤徹三」=「実話怪談」と思い込んでしまう私。「怪の標本」が凄く好きだったからなあ。この本は短篇小説集ですので、お間違えのないように。
文章の上手さからすぐに物語世界に入り込めます。 「ブラックアウト」が1番好きでした。
主人公は売れない飲み屋やってるけど、仕事にもやる気ない20代の男。同棲相手は子持ちのヘルス嬢、浮気相手はホステス、そこにまた別の女が関わってきて、と…
読んでいけば大体オチの想像はつくと思いますが、やはりラストにはしみじみ厭な気分なり、怖くなりました。
主人公の男にどっぷり入り込んでるから、飲み屋の開店前のけだるさ、夏の暑さ、酒でごまかす弱さ、店のおツマミをコンビニで酒をディスカウントストアで仕入れるチープさ、もうぐったりやられました。
読み終えてもう主人公の男に入り込まずに済んで、ホッとした位(笑)
作者の心理描写の妙故か、とにかく主要登場人物にはどこかしら「絶望」「諦め」「厭世」が感じられますね。そのうえで皆がとても静か。
「太陽さんありがとう!さあ、今日も頑張るゾ!」なんてキャラクターはともかく、
「ぎゃあああお化けだ幽霊だうわあああ助けて〜」なんてキャラクターも出て来ない。
皆が怪異に遭遇しながら、目を見張り言葉も出せず冷や汗だけを流し、でもどこかで「ホラこうなると思ってた」と言わんばかりの諦観ぶり。
作品世界自体が既に澱んだ沼の中や、嫌に成る程暑い真夏の夕方の様。 この世界なら必ず何かが起こるよ、そしてそれは怖くて嫌な事に違いないよ…。
ラストの作品のラスト一行。あああ嫌…。