加門いわく「いまだ継続中」という両国、震災慰霊堂の話。日本人も多数犠牲となった上海の列車事故が起きる数日前に重慶の旅館で出会った死神。1階のドアが塗り固められ、2階のドアも針金で封じられたある町工場の話。どこからか丸めた髪の毛が落ちてくるという某出版社別館の更衣室。真冬の東京で遭遇した井戸の上の首だけの女…。
これほどさまざまな怪奇体験をしていながら、それを語る加門の語り口は実にあっけらかんとしている。幽霊にマッサージをさせた話やかみついて格闘した話などは、ユーモラスなほどだ。しかしこの加門の軽妙な語りに引きこまれていくと、いつの間にか怪異の扉へと引きずり込まれていくことになる。加門が「ほんっっとうに!参りました」と語る最終夜にまでたどり着いたころ、読み手は想像を絶する恐怖を体験するに違いない。「怪談の神髄は語りにあり」というコンセプトで編まれた本書の試みは、見事に成功しているといえそうだ。(中島正敏) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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