本書は水木しげる先生が1958年に東真一郎名義で暁星から出した貸本漫画の復刻です。
ラバンとは人間の血とゴジラ(!)の血とが何かの関係で総合された結果うまれた、新種
の動物のことです(外見は巨大化した大トカゲです。鼻から煙を吐いています)。物語は
人間がラバンになると、どんな運命が待っているのか。当事者の人間関係をまじえて描い
ています。
では本書の興味深い点が何かといいますと、この作品がのちに鬼太郎作品として結実して
いることです。それは貸本版鬼太郎の「ないしょの話」、マガジン版鬼太郎の「大海獣」
です。つまり本書は両者の原型なのです。
三者を比較すると、つぎのようになります。
(1)怪獣ラバン(1958年)
天才学生の水木一郎は学会でゴジラがニューギニアのポロゴン山で生息していると主張
する。これはライバルの伊川二郎がゴジラがどこかにいるとの発表の、さらに先をいく内
容だった。ちょうどそのころポロゴン山でゴジラが見つかる。そこで二人もゴジラ探検隊
に加わる。しかし伊川は手柄を独占しようと目論む。そこでゴジラの血を注射して水木を
葬り去ろうとする。それにより水木は怪獣ラバンに変身してしまう。(当時の人気作家、
手塚治虫や武内つなよしの作品を意識した絵になっています。しかし水木が毒矢に射られ
てから、ラバンに変身するまでの描写は、水木色が前面に出ています。この部分は三作品
のなかでも出色の出来です。)
(2)ないしょの話(1964年)
天才学生の山田一郎は研究発表でニューギニアのラド湖に生息する鯨神(くじらがみ)
が、くじらの祖先ゼウグロドンであると発表する。それにたいしライバルの村岡花夫はそ
の存在を否定する。はたしてゼウグロドンは何十万年も生きているのか。そこで山田と村
岡は鯨神をさがす探検隊に加わる。しかし村岡は手柄を独占しようとし、この鯨神の血を
注射して山田を葬り去ろうとする。それにより山田は鯨神に変身してしまう。この作品に
は「三つの願い」のモチーフがくわわり、さらに深化している。また鬼太郎の関与は最小
限にとどまっている。
(3)大海獣(1966年)
少年天才科学者の山田秀一はニューギニアで見つかったクジラの祖先の、大海獣(ゼオ
クロノドン)が不死の肉体をもっているのではないかとの仮説を出した。そこで山田少年
は墓場の鬼太郎とともに大海獣をしらべる探検隊に参加する。しかし山田少年は手柄を独
占しようと目論む。そこで大海獣の血を注射して鬼太郎を葬り去ろうとする。それにより
鬼太郎は大海獣になってしまう。
こうして見ますと、鬼太郎シリーズが受け継ぐかたちで、水木先生がこの作品を発展させ
ていったことがわかります。したがって本書は鬼太郎作品に親しんでいる人にとって、お
おいに興味ある作品といえるのではないでしょうか。
〈目次〉
探検隊出発!
現れたゴジラ
おそろしいゴジラの血
おまえは幽霊か?
世界的大成功
お守りの怪?
それは怪獣ラバンだっ
ひにくな運命!
ラバン一号
悲劇ラバン十七号
〈怪獣ラバン読本〉異形の者の悲しみ(中条省平)