彼らの詩世界のルーツの1つ、江戸川乱歩を題材とした作品。いつもよりストレートで一般向けな印象だが、曲展開に演劇性が強いため物足りなさは感じなかった。
「みなしごのシャッフル」はメロディーと詩の語り口が良い雰囲気、聞いていると郷愁にかられる。「刑務所はいっぱい」は軽快なノリだがなかなか演劇的な展開で、最後の脱獄して走っているとサイレンが響きだす部分は非常にスリリングでカッコイイ。「あしながぐも」は「あしながぐもだろう あしたがあるだろう」という響きが面白く、最後の倦怠感と哀愁に満ちた歌声は、聴いてるとホントにやるせない気持ちになる。大作「芋虫」はどこまでも暗く悲しく虚しく絶望的。乱歩の短編「芋虫」が題材。戦争で両手足を失い耳も聞えず口もきけなくなった陸軍中尉とその妻、淫欲のぬかるみに果てなく沈んでいく生活…原作は妻の視点から描かれていたが、人間椅子は中尉の視点から描いている。最後のギターソロは心を激しくかき乱す。「名探偵登場」はコミカル、むしろ迷探偵っぽくて笑える。「楽しい夏休み」は小学校低学年の作文みたいな歌詞、何か恐ろしいオチがあるのかと思いきや何のオチも無い…それこそ最も恐ろしいどんでん返しということなのだろうか。ただ、小学生の楽しい夏休みを描くだけの詩に反して曲が妙に暗く不気味で全然楽しそうじゃない、あまりにミスマッチで気持ち悪いものを感じさせる。精神を病んで心だけが子供時代に戻ってしまった中年男が虚ろな目で「夏休みだー楽しいなー」などと繰り返し呟いているような光景が思い浮かぶ。ここまで怖い曲ってなかなか無いかも。「大団円」はラストにふさわしいドラマチックで演劇的な展開をする大作、壮大で重々しい。特に前半の荘厳で悲劇的な調べはかなり胸にグッと来る。