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クーロン黒沢は、そんなナイーブな感性など鼻で笑うかのようにアジアをクールに戯画化して描写する。この本では、アジアの不気味な海千山千の強者共と、そんなアジア深部の泥沼にはまり込んでしまった日本人の物語。登場する日本人は、欲望のすべてを包み込んでしまうかのようなアジアの空気に翻弄され、冗談みたいなストーリーを展開してしまった連中。
例えば、売春婦を追っかけてカンボジアからベトナムまで大捜索を強行した青年。騙されたネパール人に仕返しをしようとして逆に留置場に入ってしまった男、ポルノマニアぶりが高じてついに一線を越えてしまったコンピュータ会社社員。アジア各地で欲望を爆発させて沈没していった実例が次々と紹介されていく。
彼の描写は実に痛快。カネ、女、クスリ、エロ。欲望に関わる人間のドロドロした生態を、ユニークな比喩を駆使しドライな感性で、まるで悟ったかのように語る。沈没した日本人も、現地の怪しいアジア人もクーロン黒沢の餌食になっている。しかし、筆者が彼ら沈没日本人を心底軽蔑しているとは思えない。
彼が人間のどうしようもない業のようなものに愛情を感じていることは何となく伝わってくる。そういった背景を見せずにクールに描ききる才能。彼の本の魅力である。
日本では存在し得ないような奇人変人。
それが受け入れられてしまう不思議な世界。
それがこの書で描かれている世界です。
日本人は日本という社会の中でこそ生きていける。そして日本社会から抜け出した(はみ出した)人々は日本の常識とはかけ離れた離れ業の怒濤の日々を送っているともいえるのではないでしょうか。そしてそれらの人々の紙一重の存在である著者はいつか自分もそちら側に言ってしまう危機感と親近感を持ちながら彼らの姿を描いています。
また、日本にいた時は意外と正常だった人が多いことも誰しもそんな愛すべき奇人になる可能性があるという不安感をいただかせます。
あまり関わり合いになりたくはないが、遠目に観察したい人々ばかりです。
この本自体が少し古いのでそんな愛すべき人々の居住・徘徊するエリアは多少変化しています。それでもプノンペンを代表とする東南アジアの各地で彼らを見ることができるでしょう。
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