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性的唯幻論序説―「やられる」セックスはもういらない (文春文庫)
 
 

性的唯幻論序説―「やられる」セックスはもういらない (文春文庫) [文庫]

岸田 秀
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

女が男に一方的に「やられる」セックスというものがある。人類だけに見られるこの奇妙な現象は、何に起因するのだろうか―99年に本書の前身『性的唯幻論序説』を発表した後、女子学生たちから寄せられた「女の性欲への理解が浅い」という批判に、ものぐさ先生が一念発起。さらに議論と思索を重ねて、ついに完成した決定版。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

岸田 秀
昭和8(1933)年、香川県善通寺市生まれ。早稲田大学卒。中学時代から強迫神経症に悩まされ、自身の心の問題を解決しようとしたのがこの道に進んだきっかけ。やがて強迫症状はすべて自分を支配しようとした母親との葛藤から起きたものと悟り、神経症から解放される。52年、人間は本能の壊れた動物であり、「幻想」や「物語」に従って行動しているにすぎないとする「史的唯幻論」を『ものぐさ精神分析』のなかで披瀝、一大センセーションを呼ぶ。以降、精神分析の手法を社会、集団にも適用させる特異な文明批評家として人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 443ページ
  • 出版社: 文藝春秋; 改訂版 (2008/9/3)
  • ISBN-10: 4167540118
  • ISBN-13: 978-4167540111
  • 発売日: 2008/9/3
  • 商品の寸法: 15.8 x 11.2 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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18 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 倒錯委員長 トップ500レビュアー
形式:文庫
内田春菊の表紙に思わず「ジャケ買い」してしまった『ものぐさ精神分析』の岸田秀の新刊。
以前に文春新書から出ていたのだが、あとがきによると出版後にバイアグラについての論述に対して、ファイザー製薬の社員から事実誤認があるという手紙をもらったり、その後にもいろいろ考えたことなどが増え、ほぼ倍増という分量で文春文庫から出ることになったらしい。かなりお得である。もう70を超えるのに、未だに女の子と楽しんでいるような書き方が、なんか読んでいてビクビクする。いや、本当に楽しんでいるのかもしれないけど。

岸田秀に対しては比較文学者の小谷野敦が前々から批判的であり、江戸幻想批判―「江戸の性愛」礼讃論を撃つという本も出しているが、本書を読むと確かに岸田が前近代に過剰な幻想を抱いているようにも見える。小谷野の最近のブログ(http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20080903)でも、本書が少し取り上げられている。
他にも、西洋と東洋のあまりにもクリアカットにされた二元論というのは、どうも眉唾もんのような気がしてならない。例えば、東洋は恥の文化であるから路上キスができないが、罪の文化である西洋人にはそれが神の名において二人でやるならば罪でないからできるという。しかし、もともとキリスト教はセックスを罪としたと岸田は書いており、なら公然と性的な行為をするのは罪に該当して、してはならないという心理が働く可能性はないのかという話にもなってくる。

ただ全体的に見れば、岸田の独創性あふれる性の言説というのは読むに値すると思う。
彼の性言説の大前提となるのは、「人間の本能は壊れていて、性的に不能である」ということ。人類は、発情期になるとオートマティックに性交をする動物のようには出来ないから、個々人が自分なりの性的幻想を持っているわけである。

トラウマとは語り得ぬものであり、精神分析家は患者の症状に架空の物語を与え、治癒する。性欲とは、人類にとってその真相が語り得ぬ七不思議のひとつに数えてもいいものではないだろうか。そう考えることができるならば、この岸田の「物語」も、その症状を説明する物語としては読めはしないだろうか?小谷野センセ。
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13 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 こういう本、好きです。だから、読みました、400頁超のこの「改訂版」も。
 でも、西洋の歴史に関するあたりの歯切れの良さ、おもしろさに比べると、近代から現代の日本にかんする部分に不満が残ります。個人的にこういう人を1人知っている、といったエピソードを一般論に変換してみたり、具体的な統計や指数、あるいは研究はないのに、観念的に「不能者/不能症」が「増えている」と言ってみたり。「増えている」というのであれば、時間軸的にいつから見られる現象で、何を基準に増えている/多い、といったことが言えるのかを示してこそ学者だと思うのだが、思っていることを述べているだけならば漫談の類です。
 女性にかんする記述も多いのですが、男性高齢者である著者が語るには限界がありすぎて、気の毒。時代は変化しているのですから、女性が書いた論文なり著述を引用するなりして視点が固定するのを防げばよさそうなものですが、していません。教え子のレポートで知ったことですが、と言いつつも、そういった出典を明確に巻末に提示することもしない、という独善的な部分に納得できません。
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形式:文庫
やはり、岸田秀の言うことは格別に面白い!
「唯幻論」は、ついに「性」に挑んだ。
氏の著作は大体読んでいるが、
本書に限っては、少女アニメを連想させる装丁に抵抗を感じていたため、まだ手を付けていなかった。
(ただし、今はこの装画を描いた内田春菊なる作家にとても興味がある。)

本書は、我々が日々敬遠しがちな―しかし、実は多いに関心を寄せている「性」をテーマにしたものである。
「『やられる』セックスはもういらない」という副題に名劣りせず、
過激なフェミニストたちにも満足を与える内容になっていると思う。
男女が平等に快楽を共有するためにどうしたら良いか。
それを考える上で、とても勉強になった。

「人間は本能が壊れた動物である」という言葉は、岸田氏が爾来言い続けてきた言葉である。
したがって、性本能も壊れている、というのが今回の出発点。
そこで、人類は性欲を発明せざるを得なかった。
その発明は「文化」であり、それが証拠に、各々の文化圏によって性欲の基となる共同幻想が異なっている。

西欧においては、性に対する嫌悪とも言えそうな、厳格な禁欲を命じるキリスト教が根底としてある。
女性は清純が好ましいとされ、男達の性欲は叶いづらくなった。
性欲は男女に等しく存在するものであるのにもかかわらず、それは抑圧された。
宗教によって、とりわけ女性の性欲は無いものとされ(あるいは矮小化され)、女達は自己欺瞞に苛まれてきた。

そして、そのような西欧型の共同幻想は近代に至り、日本にも導入された。
著者によると、性欲は、絶対的な「神」が衰え死んだと思われた「近代」に発明されたそうだ。
同時に、脱亜入欧を目指した明治政府もこの性文化を受け入れ、
むしろ利用していた節さえ窺えるという(345ページ)。

ということは、「近代」こそが男女不平等なセックスを産み出した元凶であるのか。
著者は近代を「強姦の時代」(156ページ)とか「サディズムの時代」(172ページ)と呼ぶ。
性観念の大幅な転換によって以降、日本の男女も恋愛を不合理なものとして受容せざるを得なくなった。

といった所で、「性」の議論は「資本主義」へと発展・展開する。
ここからが、唯幻論の本領発揮である。
かつて、『続・ものぐさ精神分析』で感銘を受けた「史的唯物論批判」に迫る内容である(特に、307〜310ページ辺り)。
今まで誰も書けなかった(書かなかった?)「性」と「資本主義」の関係を明解に説明し、
資本主義の限界を指摘するのである。
単純に「エロパワー」と言ったら低俗な表現かもしれないが、
性欲がこれほどまでに人類の行く末を左右するものであるとは…

我々にとって、真の幸福を実現するために「性」の問題について真面目に考えることは重要である。
「資本主義の精神を支えていた厳しい禁欲的性道徳は存在理由を失った」(383ページ)とは、その通りではないか。
確かに、本書は近代以前の性文化についての考察がないままに書かれているから、
著者の言説を、そのまま鵜呑みにするのは健全でないかもしれないが。

けれども、「本能が壊れている」という普遍的原理だけで、
こうも見事にあらゆる事象を説明されてしまうと、何も言えない。
恐れ入りました、ホントに。

尚、若干蛇足かもしれないが、キリスト教徒の信仰に対する苦悩を描いた作品として、
遠藤周作『死海のほとり』あたりがお薦めである。
ついでに、本書に興味を持ったなら、アダム徳永氏の「スローセックス」シリーズとか
宋美玄氏の本を読んでみるといいかもしれない。
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