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ただ、本書についてどうしても納得がいかないのは、ジェンダーを無くすということがいかに一筋縄ではいかない困難なことであるかということを、これだけ明快に示していながら、最終的な結論は、まるでガリレオみたいに、「それでもジェンダーは無くさなくてはならない」になってしまっていることです。
言うまでもないことですが、「ジェンダーを無くせば性差別が無くなる」という命題は真かもしれませんが、「性差別を無くすためにはジェンダーを無くさなければならない」という命題は、かならずしも真ではありません。
客と店員のような関係を考えてみてもわかるように、ある種の役割期待に応えるということは、期待する側ばかりではなく、応える側にもメリットがある場合も多いので、役割期待が存在するということだけでは、即差別であるとかない方がよいとか言えないと思うのですが。
そう考えると、問題は、ジェンダーが存在することではなく、本人の意思を無視して一方的にジェンダーを押し付けられることであって、ジェンダーを本人の意思で選択できるようにすることの方が、より現実的なソリューションではないでしょうか。それは、ある種のコミュニケーションのプロトコルを洗練させることなどにより、十分に実現可能なことであると思うし、現実もそういう方向に進みつつあるような気がするのですが。
そんなわけで、性の問題について考えるための叩き台としては十分使える本だと思うのですが、これだけ明晰な分析をできる人が、なぜ結論先にありきになってしまうのかという疑問が、どうしても拭えませんでした。
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