題名が「性愛の日本中世」なので、その内容だけで1冊だと思われているかも知れないが、そうではない。第一章が「中世の性愛と稲荷信仰」。第二章が「歴史の中の「女性神話」の誕生」。第三章が「神仏と女神の世界」。第四章が「中世の女と物語文学」ということで、様々なテーマで様々に語られているのが本書。ただ、根底に流れるのはジェンダー論ではないかという印象を受けた。
興味深かったのは第四章。「14世紀の院政期から南北朝期にかけての大きな社会変動と共に、女性の地位は大きな変化を見せる。婚姻形態の変化、封建的な「家」の成立によって、女性の社会的な立場も影響を受けざるを得なかった」と田中先生は語る。物語文学の中に垣間見えるその変化を、田中先生は丹念に読み解いていく。
題名が邪魔して買いにくいと思われる方もいるかもしれない。実は私もその一人だった。しかし読んでみるとそうではないので、ぜひお勧めしたい1冊。