西部邁と言えば保守論客として知られ、今となっては膨れ上がった右論客の中でもひと際、輝きを放っている存在だ。
佐高信と言えば左翼論客として知られ、進歩的文化人的な評論家であり、右派からは『反日・左翼・売国奴』として恨み骨髄に論じられる存在だ。かつて、佐高はその著書で西部をボロカスにこきおろしていた。
そんな二人が、朝日ニュースターで対談し、番組をしていると知った時の驚きは絶大だった。その内容は、様々な思想家、政治家について論じ合うという異色のもので、主役である西部と佐高が、多くの思想家の著書を読み込み、圧倒的な教養を身につけていなければ成り立つはずのないものである。
彼らがお題とするのは古今東西、様々な思想家、評論家、政治家である。そして、彼らの口から出るのは、濃厚な思索と知識量に裏付けられた非常に骨太な評論、意見、批判、礼賛である。番組と違い、活字になると評論が新鮮味を伴うのが本の利点と言える。彼らの評論の味わいは、昨今の評論家の文が失いつつある咀嚼の楽しみを十分すぎるほどに含んでいる。
単純に、思想に関する参考書的に座右に置いておくにのも不足はない。右派と左派、両派を代表する人物が膝を突き合わせたからこそ、実現した読みごたえたっぷりな対談集となっている。やや値が張るが、買って損はない。
そして、右派と左派が実は互いに価値観の違いを飛び越えて論じあえるという事実もまた、『右翼』『左翼』と決めつけて互いの価値観を否定しあう傾向にある昨今の私たちに大きな何かを提示していると言える。あらゆる意味で意義を含み過ぎている贅沢な一冊。